Category: 税理士がひと肌脱ぎます

5月 05 2008

会計参与の導入とその活用~会計参与制度の利用促進を如何に図るか~

 5回に亘り会社法で新設された会計参与制度の内容について述べてきましたが、このシリ-ズも今回で終わりとなります。最終回はその締めくくりとして、会計参与の導入の効果と活用の仕方についてご紹介します。

1.会計参与の心構え
 会計参与に就任する税理士・公認会計士等は先ず『会計参与の行動指針』に基づいて実際の職務を遂行することが必要です。将来、会計参与を導入予定の会社に対しては、そのための体制作りを指導し、導入のための環境の整備を会社と一緒になって行なうことにより、信頼関係を高めることができます。

2.会社経営者の役割
 会社の経営に携わる取締役は、常に会計参与と連携しながら、計算関係書類の作成に必要な資料を提供し、信頼性を高める努力をすることにより、会社への信頼性も飛躍的に拡大することになります。但し、会計参与を頻繁に交代させることは、会社経営に悪影響を与えることに繋がることを肝に銘じなければならない。会計参与を選任する際にはそのことも十分吟味することが大切です。

3.企業経営への影響
 会計参与と共同して作成した計算関係書類は信頼性が高いため、取引先や消費者等に対して積極的な情報開示が求められ、将来の株式公開を目指すことも考えられます。

4.金融機関の姿勢
 現在、『中小企業の会計指針に関するチェックリスト』を活用した融資が行なわれていますが、あくまでも外部からのチェックであるため一定の限界があります。会計参与は会社内部からチェックを行なうものでその信頼性は一段と高まることが予想されます。金融機関では、そのような会社に対して金利面などで優遇措置をとる可能性があり、また、代表者の財産を担保とする融資から、会社の収益性を重視する姿勢に変化する一因となる兆しも出てくるでしょう。

5.損害賠償責任
 経営不振により、会社が倒産に至るような場合、会計参与も取締役と同様にその責任が問われます。職務遂行について過失があればその程度により損害賠償責任を負うケ-スも出てきます。それだけ責任も重大だということです。

 会計参与に関していろいろ述べてきましたが、まずは会社経営者が会計参与制度を導入し、会社の財務内容の信頼性を高めることがこの制度の成否の鍵であるといえます。

4月 07 2008

会計参与と中小企業の会計に関する指針との関係~会計参与が遵守すべき基準とは~

 平成17年8月1日『中小企業の会計に関する指針』が日本税理士会連合会・日本公認会計協会・日本商工会議所・企業会計基準委員会より公表されました。
 旧商法では、計算書類の作成に関して「公正なる会計慣行を斟酌すべし」という漠然とした規定が置かれ、その内容の曖昧さが問題となっていました。そこで、中小企業庁が平成14年6月「中小企業の会計に関する研究会報告書」を発表し、中小企業の会計のあり方について先鞭を切りました。平成14年12月日本税理士会連合会より「中小会社会計基準」、平成15年6月日本公認会計士協会より「中小会社のあり方に関する研究報告」が出され、中小会社の会計に関心が高まってきました。そこで、これらの報告を統合するために作成されたものが中小企業の会計に関する指針となりました。
 この指針は、中小企業が計算書類の作成に当たり、拠ることが望ましい会計処理や注記等を示しており、この指針に強制力はないが、一定の水準を保つために推奨されています。
 この指針の適用対象は、原則として商法適用会社等や会計監査適用会社以外の中小規模の株式会社とされ、特例有限会社・合名会社・合資会社・合同会社などもこの指針に拠ることが推奨されています。
 会計参与設置会社は、会計参与が取締役と共同して計算書類を作成することが目的であり、会計参与が拠るべき会計のあり方としてこの指針が存在意義を有しています。但し、会計参与設置会社がこの指針に拠らず、会計基準に基づいて計算書類を作成することは、問題ないとされています。
 中小企業の提供する会計情報は、当然ながら利害関係者の利害調整に資することが求められており、かつ、経営者が企業実態を把握し企業経営に生かすことも会計情報の役割として期待されています。
 会計参与がこの指針を積極的に利用し、指針に沿った会計処理や注記等が計算関係書類に反映することが、中小企業の会計に関する水準を向上することに繋がると思われます。

(税理士 林 隆一)
3月 03 2008

会計参与が作成する報告書とは~会計参与は職務遂行の後、何を作るのですか~

 株式会社では、事業年度終了後事業報告とその附属明細書の作成が義務づけられています。事業報告に記載すべき主な内容は、当該株式会社の状況に関する重要な事項と体制の整備についての決定又は決議があるときは、その決定又は決議の内容の概要とされています。事業報告からは計算書類及びその附属明細書並びに連結計算書類の内容となる事項が外され、その結果、会計監査の対象外となり監査役の監査対象となりました。
 非公開会社で会計参与設置会社は、会計参与と責任限定契約を締結している場合には、その契約内容の概要を事業報告に記載する必要があります。
 会計参与は取締役と共同して計算関係書類の作成に際し、株主や債権者に対する情報提供を目的とする会計参与報告の作成が義務づけられています。但し、取締役と共同して計算関係書類の作成の作成が出来ない場合は、会計参与報告を作成することはできません。また、作成された会計参与報告は株主総会等への提出義務もありません。しかし、法定の備置き場所にて閲覧または交付の請求があった日時点の株主や債権者に対しては開示することになっています。
 会計参与報告の記載内容は次に示す事項です。(1)職務を行うに当たって会社と合意した事項のうち主なもの、(2)計算関係書類のうち取締役と会計参与が共同して作成したものの種類、(3)計算関係書類の作成に関する事項でア資産の評価基準.イ固定資産の減価償却の方法.ウ引当金の計上基準.エ収益および費用の計上基準.その他計算関係書類の作成のための基本となる重要事項、(4)計算関係書類の作成に用いた資料の種類その他計算関係書類の作成の過程及び方法、(5)(4)記載の資料について.ア著しく遅滞して作成されたときは、その旨およびその理由.イ重要な事項について、虚偽等の記載がされていたときは、その旨およびその理由、(6)計算関係書類の作成に必要な資料が作成されていなかったときまたはその保存が適切にされていなかったときは、その旨及び理由、(7)計算関係書類の作成のために行った報告の徴収および調査の結果、(8)計算関係書類の作成に際して取締役と協議した主な事項。
 なお、会計参与報告の記載例が日本税理士会連合会および日本公認会計士協会から公表されています。

2月 04 2008

会計参与の役割とは~会計参与は会社で何をするのですか~

会計参与は、税理士(税理士法人を含む)または公認会計士(監査法人を含む)が就任する会社の機関であり、取締役と共同して計算関係書類(その附属明細書を含みます)を作成することは前回までにお話ししたとおりです。
 従来、大会社については会計監査人の設置が義務づけられ、会計監査人が会社の財産と損益の状況を適正に表示しているか否かを監査意見として表明することにより、計算書類の信頼性を保証する役割を負っていました。株主が大会社と比べて比較的少人数である中小会社についても、近年経営者による粉飾決算は後を絶たず、社会問題化することは稀ではありません。そのため、専門的知識を有する税理士や公認会計士が会社の機関として計算関係書類の作成に関与することで、会社決算の適正化を図る目的で導入された新しい制度です。会計参与は、共同して作成する計算関係書類に関して会計参与報告書を作成することが義務づけられています。会社法が会計参与に要請していることは、計算関係書類の作成に積極的に携わり、株主や債権者保護だけではなく金融機関からの融資の評価に耐えうるだけの内容を深め、正確性を担保し信頼性を確保することにあります。このような重大な役割を負った会計参与は、計算関係書類の適正性を高めるための責任が大きいことを利害関係者は気付くに違いありません。
 会計参与は、特例有限会社を除くすべての株式会社で任意に設置することができます。株主総会において会計参与は選任されますが任期は取締役と同じとされていますので、非公開会社においては10年間が可能です。
 会計参与設置会社である旨及び会計参与の氏名(法人の場合は名称)については登記事項となっていますので、誰でもそれを知ることができます。
 なお、税理士法人または監査法人が会計参与に選任された場合は、法人の社員の中から会計参与の職務を行うべき者を選び会社に通知することが必要です。このように資格要件を有する者が会計参与に選任される新しい制度は、専門的知識を駆使することで大きな期待と役割が注目されていると言っても過言ではないでしょう。

1月 07 2008

会計参与に就任できるのは誰ですか ~会計参与の資格とは~

現行では企業の会計に関する専門家として税理士と公認会計士が業務を行っています。その上で、税理士は税務、公認会計士は監査証明とそれぞれ法定された専門分野があり、税理士と公認会計士の職域は区別されていますが、どちらも個人の資格のみならず、法人組織も認められています。税理士の場合は、税理士法人、公認会計士の場合は監査法人という名称を付けています。企業の数から言えば圧倒的に多いのは中小企業であり、その中小企業に関与しているのは税理士の方が多いということも現実です。そのため、中小企業の外部監査という問題が俎上に挙がって以来税理士の活用を巡って様々な議論が展開されてきましたが、実現には至りませんでした。
 今回の会社法の中で創設された会計参与は、会社内部において税理士(税理士法人を含む)と公認会計士(監査法人を含む)の能力を活用するため、その資格を有する者が会計参与に就き(会社法上は取締役と同様の地位のため登記が必要です)、会社の作成する計算書類を取締役に任せるのではなく、共同して作成することにより、計算書類の信頼性を高め財務内容の健全化を図ることにあります。
 大企業を中心とした上場企業は、外部監査を受けることにより、財務内容についてのお墨付きが与えられています。最もそのお墨付きも最近の一連の不祥事で公認会計士に対する不信感が醸成され、金融庁による公認会計士に対する規制は厳しくなっていますが、逆に公認会計士の増員が監査の質の問題とリンクし、公認会計士業界は焼け太りの様な状況を生んでいます。
 中小企業の計算書類の信頼性を高めようとの議論が出てきた理由は、倒産や粉飾決算による損害を被る債権者が依然として多い状態の中で、有限責任により責任の範囲が限定される中小企業の経営責任が財務面からみて、それが十分機能していない状態が今日まで続いているという現実です。中小企業といえども利害関係者に対する責任は当然存在するわけであり、経営者だけでは果たし得なかった経営責任を補強するために会計参与が誕生したことになります。会計参与に就任する税理士や公認会計士への期待が高まることでしょう。

12月 03 2007

会計参与とはなんですか ~会計参与が誕生した経緯~

 最近「監査難民」(講談社)という本が出版されました。カネボウの粉飾決算を旧中央青山監査法人の監査担当者である公認会計士が見逃したことにより、金融庁から業務停止の行政処分を受け更に公認会計士が東京地検に逮捕されたため、監査法人の信用力が失墜し解散に追い込まれてしまいました。その結果、株主総会で会計監査人を選出できない企業が出てくるという深刻な状況が予想されました。監査報告書を添付した有価証券報告書を国に提出出来ないことが確認されれば、上場廃止となります。上場廃止による企業イメージの低下を恐れ、監査人不在で漂流する企業を描写しています。
 株式会社に代表される企業が日本の経済を担っていると言っても過言ではないでしょう。上場会社など社会的影響力が比較的大きい会社は公認会計士による外部監査を受け財務内容の開示に信頼性を付与しています。それを見て、株主や債権者等外部の利害関係者は投資又は取引の意思決定を行うことが出来ます。ところが企業の大部分を占める中小会社にあっては同族経営を中心とした閉鎖企業のため、企業の財務内容について外部に公表することは消極的でした。しかし、中小企業といえども倒産すれば、取引先など債権者に迷惑をかけることは必至です。そのため、以前から中小企業であっても、有限責任を享受する以上外部から財務内容のチェックを受けるべきであるとの議論がなされていました。
 この議論が俎上に挙がった切っ掛けは、昭和49年の商法改正でした。改正の発端は大会社の倒産、不正経理による乱脈経営の防止を図るため監査制度を強化するものでした。その後、昭和59年「大小会社区分立法及び合併に関する問題点」による限定監査、昭和61年「商法、有限会社法改正試案」による会計調査人による調査が法務省から提示されましたが、いずれの提案も税理士と公認会計士と間の調整がまとまらず見送られました。
 この問題も一旦終息したかのように見えましたが、商法の現代化~会社法への衣替えに伴って蘇生してきました。税理士と公認会計士(いずれも法人を含む。)が会計参与として会社の内部から財務内容をチェックするとの提案が出されました。

(税理士 林 隆一)

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