Category: 相続税

12月 09 2014

相続税・贈与税の改正

Q 平成27年から相続税が改正されると聞きましたがどのような改正ですか?
A まずは①相続税の基礎控除の縮小です。
改正前では定額控除額5000万円に法定相続人一人につき1000万円の比例控除額を加えた金額とされている相続税の基礎控除が、27年1月1日以降の相続からはそれぞれ4割減額され、定額控除額3000万円に法定相続人一人あたり600万円の比例控除額を加えた金額に改正されます。次に②相続税・贈与税の最高税率の引上げです。50%の最高税率が55%へ引上げられ、6段階ある税率構造も8段階へと改正されます。最後に③小規模宅地等(土地の評価額を減額する特例)の対象面積の拡大です。居住用の宅地について改正前は240㎡までしか適用できませんが、平成27年以降は330㎡に拡大されます。主な改正としてはこの3項目があげられます。今回の改正で全国平均4.2%の相続税の課税割合(申告件数/死亡者数)が6%程度になることが予想されています。課税割合の増加だけをみれば課税対象者が約1.5倍になることになりますが、改正後でも9割以上は課税対象にならい計算ですので様々な情報に振り回されないように気を付けてください。

Q 改正に備えて何かしておかなければいけないことはありますか?
A まずは所有している財産を把握し、それらの相続税評価額がどのくらいになるかを正確に計算する必要があります。相続税評価額がQ1の改正後の基礎控除を超えるのであれば生前贈与などの生前対策を活用してください。基礎控除を超えなかったとしても、将来相続人の間で相続争いが起こらないように遺言を作成しておくことをお勧めします。また、改正前の基礎控除を前提に遺言を作成された方は、遺言の見直しが必要になる場合もあります。

(税理士 青山徹)

12月 04 2014

相続税制の改正

 相続税と贈与税の改正が直前に迫りました。今回の改正により課税対象者の裾野が広がることが予想されています。今後、賢く財産を引き継ぐためには、相続税制の最新知識や情報を正しく理解し、相続に備える準備が必要かどうかを確認しておくことが大切です。
 以下において、平成27年1月1日から適用が開始される相続税制に関する改正事項について基本的な部分を取り上げました。しかし、その他にも最近の相続税制の改正事項においては、その適用開始が平成25年から平成27年と多岐に渡っており、重要と思われるものがいくつも見受けられます。したがって、いざという時に備えて、相続の現場をよく知る税理士に、必要な相続対策等を事前にご相談されることをお勧めめします。

Ⅰ 相続税

相続税は、平成25年税制改正により抜本的に改正され、課税強化が行われることになりました。以下に述べるように、基礎控除が引き下げられ、かつ、最高税率が55%になるなど税率構造の見直しが行われました。一方で、このような改正に対する激変緩和策の一環として小規模宅地等の課税の特例が拡充されることになりました。

 1.相続税の基礎控除の引下げ

  • 基礎控除が改正前の6割水準に引き下げられました。(基礎控除5,000万円 ⇒ 3,000万円、法定相続人比例控除額1,000万円 ⇒ 600万円)
改 正 前

改 正 後
定額控除 5,000万円 3,000万円
法定相続人比例控除 1,000万円×法定相続人の数 600万円×法定相続人の数

 2.相続税の税率構造の見直し

  • 最高税率が55%(改正前50%)に引き上げられ、8段階(改正前6段階)税率とされました。
改 正 前

改 正 後
法定相続分に
応じた取得価格
税率 控除額 法定相続分に
応じた取得価格
税率 控除額
1,000万円以下 10% ―― 同左
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
3億円以下 40% 1,700万円 2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
3億円超 50% 4,700万円 6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

 3.小規模宅地等の課税の特例の見直し

  • 特定居住用宅地等の限度面積が330㎡(改正前240㎡)に拡充されました。
小規模宅地等の区分 改 正 前 改 正 後
限度面積 減額割合 限度面積 減額割合
特定居住用宅地等 240㎡ 80% 330㎡ 80%
特定事業用宅地等 400㎡ 80% 400㎡ 80%
特定同族会社事業用宅地等 400㎡ 400㎡ 80%
貸付事業用宅地等 200㎡ 50% 200㎡ 50%
  • 特例の対象として選択する宅地等の全てが特定事業用宅地等及び特定居住用宅地等である場合には、それぞれの適用対象面積まで適用可能となりました。
選択特例対象宅地等 適用面積の上限
改正前 改正後
特定事業用宅地等と特定居住用宅地等 400㎡ 730㎡
特定同族会社事業用宅地等と特定居住用宅地等

Ⅱ 贈与税

 相続税の補完税としての性質をもっている贈与税についても税率構造の見直しが行われました。相続税に比べ贈与税の税率構造は相対的に厳しいものとされてきましたが、若い世代への積極的な生前贈与が促進される効果を期待して緩和が図られました。従って、一般的な贈与税の税率構造は原則的に維持しつつ、直系尊属(父母、祖父母など)から20歳以上の者への贈与に係る贈与税については、軽減税率を適用することになりました。

 1.暦年課税の税率構造の見直し

  • ○ 歴年課税方式の税率を「軽減税率」(直系尊属から20歳以上の者への贈与)と「一般税率」(その他の贈与)に区分した上で、最高税率が55%(改正前50%)に引き上げられ、8段階(改正前6段階)税率とされました。
改 正 前 改 正 後
右以外の場合(一般税率) 直系尊属から20歳以上の者への贈与の場合(軽減税率)
基礎控除(110万円)を
差し引いた後の課税価格
税率 控除額 基礎控除(110万円)を
差し引いた後の課税価格
税率 控除額 基礎控除(110万円)を
差し引いた後の課税価格
税率 控除額
200万円以下 10% 同左 200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円 400万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円 600万円以下 20% 30万円
600万円以下 30% 65万円 1,000万円以下 30% 90万円
1,000万円以下 40% 125万円 1,500万円以下 40% 190万円
1,500万円以下 45% 175万円 3,000万円以下 45% 265万円
1,000万円超 50% 225万円 3,000万円以下 50% 250万円 4,500万円以下 50% 415万円
3,000万円超 55% 400万円 4,500万円超 55% 640万円
  • 贈与者の年齢要件が60歳(改正前65歳)に引き下げられ、受贈者に20歳以上の孫が追加されました。
改 正 前 改 正 後
贈与者 65歳以上の者 60歳以上の者
受贈者 20歳以上の贈与者の推定相続人 20歳以上の贈与者の推定相続人
20歳以上の贈与者の孫(追加)

以上

(税理士 井川源太郎)

7月 03 2014

路線価とは

Q1 路線価とはどんな価額ですか。
A1 路線価は、その路線(道路)に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額で相続税・贈与税の土地などの評価に用います。売買実例価格、公示価格、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基にして、毎年、国税局長がその路線ごとに評定します。7月1日から国税庁のホームページで平成26年分の路線価図の閲覧ができるようになっています。

Q2 路線価による土地の相続税評価額の算出のしかたを教えてください。
A2 路線価を基に土地を評価する方法を「路線価方式」といいます。正面路線価に土地の面積を乗じて土地の評価額を算出します。土地の形状に応じた「奥行価格補正率」「間口狭小補正率」「不整形地補正率」等の補正を加えます。又、複数の道路に面している場合は「側方路線影響加算率」「二方路線影響加算率」を乗じて評価します。これらの調整率表は国税庁ホームページに掲載されています。路線価の設定の無い地区は、固定資産税評価額に一定の倍率を掛ける「倍率方式」で評価します。

Q3 貸家等がある場合の評価はどうなりますか。
A3 A2で算出した価額は自用地の価額で、貸家等権利関係がある場合は、評価額を調整します。貸家がある場合は、自用地の価額に借地権割合、借家権割合、賃貸割合を乗じた金額を控除します。貸地で、借地権が発生している場合は、自用地の価額に借地権割合を乗じた金額を控除します。借家権割合は30%、借地権割合は地域により異なりますので、路線価図で確認します。

Q4 その他特例等はありますか
A4 相続した土地が、事業用や居住用として使われている場合は、小規模宅地等の特例の適用が受けられる場合があります。負担付贈与あるいは個人間の著しく低い対価を伴う取引より取得した土地等について贈与税を計算するときは、通常の取引価額によって評価しますので注意してください。

(税理士 林 俊彰)

6月 05 2014

名義が異なる財産の取り扱い ~名義預金を例に~

 税務上、財産の名義人と本来の所有者が異なっているケースが、しばしば問題になります。名義人が実際と異なる財産は、「名義財産」(預金については「名義預金」)と呼ばれています。被相続人の名義と異なる預金その他の財産について、これらが相続財産なのか、それとも贈与(または貸付)なのかは、困難な問題で、それぞれの事案ごとの事実関係によって、その取扱いや考え方は異なります。今回は、「名義預金」について、下記の事例で考えてみることにします。

資産家Aは、自己の預金の一部を移して、子Bの名義で100万円の定期預金を作りました。5年後Aが亡くなり相続が開始しました。相続人となったBは、このB名義の定期預金について相続税の申告をしなければならないでしょうか。

 名義が異なるからといって、この定期預金がAの相続財産から除外されると考えるのは、短絡的であることはお分かりになると思います。またその一方で、AからBに贈与がなされたという考え方もできそうです。もしも贈与であるならば、100万円の定期預金は相続財産から除外され、さらに贈与税の基礎控除110万円を下回っていて贈与税の申告義務もないので、心情的には、「ならば贈与だ」と思いたくなるかもしれません(ただし、相続開始前3年以内の贈与であれば当該贈与財産は相続財産に加算されますので、注意が必要です)。
 上記事例をどのように判断すべきかについては、次の項目を総合的に勘案して判断されることになります。

  1. Bが事実を知っていたか
     まず、Bがこの事実を全く知らなかった場合には、定期預金の実質的所有者はAとなり、名義に関係なくAの相続財産として相続税申告が必要となると考えられます。
  2. 贈与契約の有無
    それでは逆に、Bがこの定期預金の存在を知っていた場合は、どうでしょうか。実は、単にこれを知っているというのみでは、贈与と判断されるとは限りません。贈与があったというためにはAB間において「(無償で)あげます」「いただきます」という合意があることが前提となります(民法549条参照)。
  3. 預金を誰が管理していたか
    この預金を現実に誰が管理していたかについても、判断の要素となります。状況にもよりますが、B名義でありながら、通帳と印鑑がAの手許に保管されていたような場合には、この定期預金はAのものと判断される可能性もあります。
  4. 果実を誰が収受したか
    上記のほかに、株式等の配当金等のような法定果実(事例の定期預金の場合は利息)を誰が収受していたかについても判断要素となります。

 安易な判断で親の預金を家族等の名義にしてしまい、無申告でいると相続税や贈与税のほかに、加算税等の追加的税負担が生じてしまうことがあります。また、これが税負担の回避を目的とした隠ぺい等と判断され重加算税の対象となってしまうこともあり得ますので注意が必要です。
相続開始後にトラブルになってしまわないために、最低限、贈与契約書を作成し、受贈者の家族等とも十分に話し合い預金等の財産が誰に帰属するのか、事実関係を明確にしておくことが必要です。その際には、我々税理士にご相談していただくことをお勧めします。

(税理士 小林正俊)

3月 06 2014

相続税の改正について

 来年1月1日以降、相続税の基礎控除が縮小されるとのことですがどの程度引き下げられるのでしょうか。
 定額分5000万円+相続人1人当たり1000万円の控除が4割引き下げられます。

 課税対象者はかなり増加するのでしょうか。
 名古屋国税局によると平成24年では管内全ての被相続人(死亡者数)の内約6%の方が課税対象者となっていますが改正後は約10%程度になるのではと予測されています。

 意外に少ない印象ですが。
 被相続人には財産を形成する前に若くして亡くなられた方も含まれています。また、のでマイホーム用地や事業用地を所有されている方、とりわけ地価の高い名古屋市やその近郊に土地を所有されている方は課税対象となるケースが多くなると思われます。

 増税の影響を緩和するような措置は講じられるのでしょうか。
 小規模宅地等の特例が大幅に拡充されます。この特例は相続人が引き続き生活の基盤とするような居住用、事業用及び貸付用の宅地等を取得する場合は一定の限度面積についてその評価額を最高で80%減額し相続税を軽減するというものです。

 どの程度拡充されるのでしょうか。
 居住用宅地の限度面積が240㎡から330㎡に拡大されるとともに、居住用宅地(330㎡)と事業用宅地(400㎡)の完全併用が可能となります。

 この特例を適用するために必要な要件はありますか。
 宅地の利用区分や取得した人ごとに定められた要件を満たさなければなりません。この特例の適用の可否によって税負担が大きく変わってきますので、事前にご自身のケースが要件に適合しているかを確認しておく事は相続対策として有効だと思われます。本特例の詳細や相続に関する質問等、お気軽にお近くの税理士にお問い合わせください。

(税理士 三島幹雄)

1月 09 2014

非嫡出子と相続税

 非嫡出子の相続分について教えて下さい
 非嫡出子(法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子供)の相続分は、民法の規定により、嫡出子の2分の1とされていました。
 しかし、平成25年9月4日に最高裁判所は、非嫡出子の相続分に関する民法の規定(非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1とする規定)は、憲法に違反するとして、無効の判断を下しました。この結果、民法の相続分において、嫡出子と非嫡出子の差はなくなりました。

 最高裁判所の判決を受けて相続税の取り扱いも変わったのですか
 平成25年12月5日に民法が改正され、「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とする」との従来の規定は削除されました。税務上も、平成25年9月5日以後、申告等により相続税額を確定する場合においては、非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定が無いものとして相続税額を計算することとなりました。

 過去に行った相続税の申告を訂正することもできますか
 違憲判断のあった平成25年9月4日以前に、申告又は処分により相続税額が確定している場合には、更正の請求は基本的にできません。
 ただし、9月4日以前に既に申告していても、相続税の申告期限前まででしたら、嫡出子と非嫡出子の相続分を同額として申告し直すことができます。
 なお、平成25年9月4日以前に相続税額が確定していた場合でも、9月5日以後に税務調査で申告漏れなどが見つかったり、遺留分の減殺請求などにより分割が決まった場合には、改めて相続税額を確定する必要があります。その際の更正の請求や修正申告は、嫡出子と非嫡出子の相続分を同額として、相続税額を計算します。

(税理士 増田信雄)

8月 13 2013

路線価とは

Q:7月1日に路線価図等が発表されましたが、路線価とは何ですか?
A:土地には、公示価格・基準値価格・路線価・固定資産税評価額・鑑定評価額・実勢価格等さまざまな評価方法があります。
路線価とは、土地の評価方法の一つで、毎年税務署が発表する、1㎡当たりの標準的な画地の宅地の価額のことです。

Q:どのようにして路線価は決まりますか?
A:路線価は毎年1月1日を評価時点とします。地価公示価格、売買実例価額、不動産鑑定士等による鑑定評価価額等を基に決められます。路線価は、地価公示価格の概ね8割程度に設定されています。

Q:どのような時に、路線価を使いますか。
A:路線価は、相続税や贈与税の土地などの評価をする時に使います。平成25年中に、相続や贈与が行われた場合、平成25年の路線価を使用して土地の評価をします。

Q:路線価はすべての土地の評価に使用できますか。
A:路線価は、主に市街地の宅地の評価に使用します。そのため、市街地以外の土地や田畑の評価には路線価は使用しません。

Q:どのようにして路線価を使用しますか。
A:土地に面している道路に価額が設定されており、その価額を評価する土地の面積に掛ければその土地の評価額が出ます。
 ただ、土地の形や土地の周りの道路状況等により補正が加わります。

Q:路線価図等は、どこで見ることが出来ますか?
A:税務署やインターネットにより閲覧できます。国税庁のホームページでは、全国の過去3年分の路線価図等を見ることが出来ます。

(税理士 佐長谷和恵)

8月 07 2013

最近の租税関連通達改正の事例について

1.通達改正の基となった事例

 通達とは、上級行政庁が法令の解釈や行政の運用方針などについて、下級行政庁に対してなす命令ないし指令とされています。租税行政においても法令解釈や財産評価などについて多数の通達が国税庁長官によって発遣されています(金子宏「租税法」18版106頁)。
 相続税や贈与税の場合、財産の評価については、基本的には財産評価基本通達(以下「評価通達」)によって評価することとされており、取引相場のない株式(いわゆる同族会社の株式)を評価する場合においては、株式保有割合が25%以上(大会社)など一定の場合には、特定の評価会社の株式として評価通達に定める特例計算によって評価(25%基準)することとなります(財基通189)。しかし、この場合の25%基準は絶対的な基準と言えるのでしょうか。
 東京高裁(東京高裁、平25.2.28)は株式保有特定会社の株式評価方法が妥当か否かをめぐる争いで、納税者側の主張を認めた東京地裁(東京地裁、平24.3.2)の判決を支持、国側の控訴を棄却する判断を下しました。
評価通達では、株式保有割合が25%以上(大会社)の「株式保有特定会社」の株式評価方式は、純資産価額方式か、あるいは「S1+S2方式」で計算しなければならないことになっています(財基通189-3)が、これは、通達が定められた平成2年当時、株式会社の設立による租税回避行為が横行したため、これを防止することを目的として手当てされたものでした。
 裁判所は今回の東京高裁の判決で株式保有割合25%という数値が「資産構成が著しく株式等に偏っている」とまでは言えないと判示して、この通達が時代にそぐわないものとなっていることを指摘したのです。
これを受けて国税庁では、本通達の「25%」を「50%」と改訂することをパブリックコメントで公表して通達の改正が行なわれました。

2.通達の改正

 平成25年5月27日付で「財産評価基本通達の一部改正について(法令解釈通達)」が発遣され適用時期等については、「平成25年5月27日以後に相続、遺贈又は贈与等(以下「相続等」)により取得した財産を評価する場合に適用されることとなりました。
 また、この通達改正は判決に伴うものなので、通則法施行令(通則令6①五)に規定する更正の請求の事由に当てはまることから、過去に遡って改正後の評価通達を適用することになります。そして、過去の相続税等の申告の内容に異動が生じ相続税等が納め過ぎになる場合には、通則法(通則法23②三)の規定に基づき、本改正を知った日の翌日から2月以内に所轄の税務署に更正の請求をすることができるわけです。
 さらに、平成25年5月27日以後に相続税等の申告をする者が、平成25年5月27日前に相続等により取得した財産を評価する場合にも改正通達が適用できる(「財産評価基本通達の一部改正について」通達等のあらましについて(情報))こととされました。
 なお、法定申告期限等から既に5年(贈与税の場合は6年)を経過している相続税等については、法令上、本改正に係る改正後の評価通達を適用することはできません。

3.実務への影響

 財産の評価においては、課税公平の見地から課税上の弊害がない場合においては評価通達によって評価時点での財産を統一的に評価していますが、通達制定時の条件がその後の経済環境の変化によって評価基準へ重大な影響を及ぼすような場合には、課税サイドでも判決などを待たずに速やかに基準を変更することが望まれるところです。
 なお、裁決や判決などに伴って通達が改正された場合には、発遣日以後のみでなく上記事例のように過去に遡ってその見直しが行われる(通則令6①五)ことも想定されるため、通達の改正は更正の請求(通則法23)を含め実務への影響は大きいといえるでしょう。

(税理士 浅野 洋)

4月 03 2013

「事業承継税制の大幅緩和」

 名古屋税理士会では、かねてより、税制改正建議の中で、事業承継税制の適用要件の大幅緩和を求めていましたが、平成25年度税制改正で取り上げられました。
 中小企業経営者の平均年齢が約60歳となっており、事業承継の円滑化は喫緊の課題となっています。非上場株式等に係る相続税等の納税猶予制度、いわゆる事業承継税制は、平成21 年度の創設以来、当初想定していたほどには利用が進んでいない状況にあります。
 平成21年~23年度の3年間で、相続税における経済産業大臣の認定件数は348件、贈与税における認定件数は168件、経済産業大臣の確認は2,758件に過ぎません(中小企業庁調べ)。このため、制度を使いやすくするための抜本的な見直しを行うこととされました。
 相続税の納税猶予制度は、後継者(=相続人。先代経営者の親族)が、相続により非上場会社の株式を取得し、要件を満たす場合には、後継者が相続前から既に保有していた議決権株式を含めて、発行済完全議決権株式総数の3分の2に達するまでの部分について、課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます。
 贈与税の納税猶予制度は、後継者(=受贈者。先代経営者の親族)が、先代経営者から一定以上の自社株式の贈与を受け、要件を満たす場合には、贈与前から後継者が既に保有していた議決権株式を含め発行済完全議決権株式総数の3分の2に達するまでの部分について、贈与税の全額の納税が猶予されます。
 平成25年度税制改正大綱において、この事業承継税制を、「具体的には、雇用確保要件について「5年間の間、毎年8割以上」から「5年間平均で8割」とする等の緩和を行う。また、利子税の負担軽減や猶予税額の再計算の特例の創設等の負担軽減や、事前確認制度の廃止、手続の簡素化等の見直しを行う。こうした抜本的な見直しを行った上で、今後、一層の普及・啓発に努め、中小企業者の利用を促していく。」とされました(この改正は平成27年1月1日以降の相続又は贈与について適用されます。)。
 そこで、手続の簡素化を行ない使い勝手の良い制度とするため、また突然、経営者が亡くなった場合にも制度活用が可能になるよう、相続又は贈与前の経済産業大臣による事前確認を不要とすることとされました。
 また、後継者要件のうち、「親族間承継要件」を廃止し、たとえば優秀な番頭さんなどの適任者も後継者の対象とし、親族外の後継者への相続又は贈与の場合であっても、相続税・贈与税の納税猶予の適用対象とすることとなりました。
 さらには、事業継続要件のうち、「雇用確保要件」を緩和し、毎年の景気変動に配慮して、「5年間毎年80%以上確保」を、「5年間における常時使用従業員数の平均が、相続開始時又は贈与時における常時使用従業員数の80%を下回ることとなった場合」に緩和するとされました。
 しかし、相続税でこの制度を利用する場合には全額納税猶予にならないことや、納税猶予の対象となる株式数に制限があるなど、依然として整備すべき事項は残されているので引続き、改正要望を行なっています。

(税理士 長谷川敏也)

3月 04 2013

「国外財産調書」の提出義務の創設

◆はじめに

 平成24年度税制改正で、年末において海外に5,000万円を超える財産を保有している居住者は、翌年の確定申告期限の3月15日までにその財産等に係る調書を所得税納税地の所轄税務署長(確定申告義務が無い者は住所地の所轄税務署長)に提出が求められる「国外財産調書」提出制度が創設された。この制度は、平成25年12月31日時点で所有する国外財産が5,000万円を超えた場合に適用があり、その提出期限は、平成25年分所得税確定申告期限(平成26年3月17日)である。「国外財産調書」の適用対象となるのは、居住者が所有する国外にあるすべての財産とされている。

◆制度の概要

(1)国外財産の価額
 国外財産の「価額」はその年の12月31日現在の時価である。外国通貨表示は本邦通貨へ換算した価額となる。「国外財産調書」には、提出者の住所、氏名、国外財産の種類、所在、数量、価額等を記載することとされている。
国外財産かどうかは、土地や建物などの不動産や車両など動産などは所在、預金、貯金等はその受け入れをした営業所又は事業所の所在による。また、社債、株式、出資等は発行法人の本店又は主たる事務所の所在により判定する。
(2)「財産債務明細書」の関係
 従来より、その年分の総所得金額及び山林所得金額の合計額が2,000万円を超える場合は、「財産債務明細書」を提出する義務がある。これには納税者のすべての財産債務を記載する必要があるが「国外財産調書」の提出が優先されるので、「財産債務明細書」には「国外財産調書」に記載した旨を記載すれば「財産債務明細書」に記載する必要は無い。なお、「財産債務明細書」の提出義務が無くても、「国外財産調書」の提出義務がある者が提出を怠った場合は罰則規定があるので注意を要する。
(3)優遇・加重措置及び罰則

  1. 「国外財産調書」の提出がある場合の過少申告加算税の優遇措置
    「国外財産調書」の提出をした場合には、記載された国外財産に関して所得税・相続税の申告漏れが生じたときであっても加算税が5%減額される。
  2. 「国外財産調書」の提出が無い場合等の過少申告加算税の加重措置
    「国外財産調書」の提出が無い場合又は提出された調書に国外財産の記載が無い場合に所得税の申告漏れが生じたときは、加算税が5%加重される。
  3. 故意に「国外財産調書」を提出しなかっり、偽りの記載をした場合の罰則
    「国外財産調書」に偽りの記載をしたり、正当な理由なく期限内に提出しなかった場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される。

201303chukei

出典:http://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei12/05/index.htm

(税理士:一川明弘)

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