Category: 中部経済新聞

1月 04 2018

国税の納付手続 ー便利なダイレクト納付を検討されてはいかがですか?ー

税額確定後、法定納期限までに確定税額を納付せねばならず、慌てて金融機関へ走られる経営者の方も多いのではないでしょうか。国税の納付の方法には、現金納付以外にも、インターネットバンキング等から納付する方法、クレジットカード納付、コンビニ納付、振替納税等、様々な方法があります。ご自身に合った納付手続を選択することで、事務効率化・納付漏れの防止につながります。

今回はその中から、事務所のパソコンから簡単に納付ができる「ダイレクト納付」の利用手続きと納付方法を紹介します。

ダイレクト納付では、事前に税務署へ届出等をしておけば、e-Taxを利用して電子申告等をした後に、届出をした預貯金口座からの振替により、簡単なクリック操作で即時又は期日を指定しての納付が可能です。
電子申告等により利用が可能な税目は、e-Taxソフトを利用して「納付内容情報データ」の送信を行うことで、全ての税目について納税を行うことが可能です。なお、納付内容情報データを含まない「申告等データの送信」のみの場合には利用可能な税目が限定されます。

 

一.ダイレクト納付のメリット

①電子申告等の後、簡単な操作で納付手続が完了します。

②インターネットバンキングの契約が不要です。

③手数料が無料です。

④即時又は期日を指定して納付することが可能です。

⑤納税者本人の納税用確認番号等を登録しておくことで、税理士が納税者に代わって納付手続を行うことが可能です。

 

二.ダイレクト納付利用開始の手続

①e-Taxの利用開始手続

事前にe-Taxの利用開始手続をします。

 

②納税用確認番号の登録

「納税用確認番号及び納税用カナ氏名・名称の登録」及び「メールアドレスの登録」をします。

 

③ダイレクト納付届出書の提出

ダイレクト納付を利用する日のおおむね1ヶ月前までに、「国税ダイレクト方式電子納税依頼書兼国税ダイレクト方式電子納税届出書」を作成の上、納税地を所轄する税務署へ書面で提出します。

 

三.ダイレクト納付による納税手続の手順

①申告等データの作成・送信

「申告等データ」又は「納付情報データ」を作成し、e-Taxを利用して送信します。

 

②ダイレクト納付の利用

「申告等データ」又は「納付情報データ」の送信後、メッセージボックスに格納される受信通知を確認し、「今すぐに納付される方」又は「納付日を指定される方」のいずれかを選択します。

 

③納付状況の確認

納付手続完了後、「ダイレクト納付完了通知」がメッセージボックスに格納されます。

納付できなかった場合、残高不足等の「ダイレクト納付エラー通知」が格納されますので、必ずメッセージボックスの確認を行ってください。

四.ダイレクト納付利用についての注意点

①地方税(都道府県税・市町村税等)については対応していません。

②ダイレクト納付を行った場合には、領収証書は発行されませんので、領収証書が必要な方は、従来どおり納付書により金融機関又は税務署の窓口での納付をしてください。

③利用開始手続時に、電子納税に限定する手続である「特定納税専用手続」を選択された方は、ダイレクト納付を利用できません。

 

【税理士 矢田宏昌】

 

1月 04 2018

確定拠出年金の税制について

Q.確定拠出年金とは何ですか?

A.確定拠出年金とは、2001年(平成13年)10月から始まった年金制度のひとつで、個人型と企業型があります。個人型は自分で自分の老後に備える制度のひとつで、企業型は会社の退職金制度のひとつです。2017年(平成29年)1月からは、個人型確定拠出年金に公務員や主婦の方なども加入できるようになりました。

 

Q.個人型確定拠出年金は誰でも加入することができますか?

A.個人型確定拠出年金では、職業等で加入資格や掛金の拠出額等の条件が異なりますのでご注意ください。また、年齢等により加入できない場合もあります。

 

Q.確定拠出年金に加入した場合、税制上何かメリットはあるのですか?

A.3つのメリットがあります。

①確定拠出年金に拠出した掛金は全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となり、所得税等が軽減されます。

②金融商品で運用する場合、決済時に運用益に対して所得税等が課税されますが、確定拠出年金では運用益が非課税となります。

③年金資産を受け取る際の給付金には「老齢給付金」「障害給付金」「死亡一時金」の3種類があります。「老齢給付金」の受取方法は、年金方式として受け取るか、または一時金として一括で受け取るかを選択できます。また、年金と一時金を組み合わせて受け取ることも可能です。年金方式で受け取る場合は公的年金等控除、一時金方式で受け取る場合は退職金所得控除が適用されます。「障害者給付」の受取方法は、年金方式として受け取るか、または一時金として一括で受け取るかを選択できます。年金と一時金を組み合わせて受け取ることも可能です。障害給付金の場合、受け取り方法よらず非課税となります。「死亡一時金」は、遺族に対して支給されます。死亡一時金はみなし相続財産として、相続税の課税対象となります。

 

Q.掛金の所得控除を受けるための手続きを教えてください。

A.個人型確定拠出年金に加入されている方は、毎年10月から11月に国民年金基金連合会から送付される払込証明書を確定申告や年末調整の際に添付してください。企業型確定拠出年金に加入されている方は、本人が特に手続きすることはありません。

 

Q.配偶者の所得から所得控除は受けられますか?

A.所得控除することはできません。加入者本人の所得からしか所得控除をすることができませんのでご注意ください。

確定拠出年金の手続きなどの詳細につきましては、国民年金基金連合会又は運営管理機関等にお問い合わせください。また、税制上に関するお問い合わせは、税理士又は税務署にお尋ねください。

 

 【税理士 中垣吉晴】

1月 04 2018

年頭所感

あけましておめでとうございます。謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

公平・公正な社会の実現、行政の効率化、国民の負担軽減と利便性向上を目指して導入された「マイナンバー制度」は、昨年11月に情報連携の本格運用が開始され、行政機関等が個別に保有する個人情報を相互に閲覧できる体制が整いました。これにより、納税申告・各種申請等の際に必要だった住民票や課税証明書の添付省略が可能となり、行政手続の簡素化と国民の利便性向上に寄与するものと期待しております。同時にマイナポータルの本格稼働が始まり、税務申告に必要な情報をマイナポータルで確認できる利便性が拡大すると思われます。

昨年3月の規制改革推進会議行政手続部会で「行政手続コストの削減に向けて~」が決定され、①行政手続の電子化の徹底(デジタルファースト原則)、②同じ情報は一度だけの原則(ワンスオンリー原則)、③書式・様式の統一といった行政手続簡素化の3原則に沿って行政手続コストを20%削減することを目標とするほか、重点分野である国税及び地方税には別途目標が設定されました。これを受けて、6月に国税庁が「税務行政の将来像」を公表し、ICT・AIの進展と経済取引のグローバル化を見据え、マイナンバーの利活用を含めた10年後のイメージが示されました。税理士業務は、その大部分が税務当局との情報のやり取りである点を踏まえ、税務行政の進化に伴う変化に順応しながら納税者の信頼に応える税理士制度の維持に努めたいと思います。

コンピューターの発達で人工知能に奪われる職業に「税理士」が含まれるという話題がありました。関連する職種は「簿記会計・監査事務」と「税務申告代理業」です。簿記会計は日々の経済取引を数字にして収益状況を表し、監査業務はその信頼性を証明する制度、税理士は決算を迎えた企業が負担する納税額を算出し税務申告書にまとめ、その過程で許されるすべての税務特典を盛り込み作り上げます。近年のクラウド会計ではネット上のあらゆる電子データを連携して会計業務を自動化することにより財務諸表を作り上げるシステムが構築されようとしています。近未来の税理士は、自動的に生成された財務諸表から適正な税務申告書を作成する、この間を繋ぐ知的判断を担う専門職として十分に機能するものと考えます。

地域住民を対象に開催してきた「市民講座」は既に5回を数えるに至りました。身近な税理士会の存在を広く地域社会に広報するために企画したものです。相続税に始まり、昨年は相続本来の話題と高齢化の進展とともに関心が深い成年後見制度へと踏み込みました。普段は税理士と縁がない納税者にとっても身近な相談相手として我々税理士を活用していただけることを願い、今後も継続する考えです。

名古屋税理士会は引き続き、税務に関する専門家として社会の要請に的確に対応し、真に国民・納税者の信頼に応える税理士制度の確立のための会務運営に努めて参ります。

皆様のご多幸とご活躍、そして平成30年が素晴らしい一年となることを祈念して、新年のご挨拶とさせていただきます。

 

年頭所感

    名古屋税理士会会長 西村高史

12月 07 2017

訪日外国人旅行者向け消費税免税制度

平成二十八年の訪日外国人旅行者数は二千四百四万人を記録し、初めて二千万人の大台を突破しました(ビジットジャパン事業が始まった平成十五年は五百二十一万人)。このような中、訪日外国人旅行者向け消費税免税制度に改正が加えられ、より利用しやすいものになってきています。

 

1、制度の概要

訪日外国人旅行者が、輸出物品販売場(いわゆる免税店)において、家電製品や着物・服、バッグといった「一般物品」又は食品類や飲料類、薬品類、化粧品類といった「消耗品」を、次の金額の範囲内で一定の方法により購入し、出国日までに国外に持ち出す場合には、その購入に係る消費税が免除になります。なお、金又は白金の地金や通常生活の用に供しないものは免税対象となる物品から除かれています。

(1)免税になる金額

①一般物品・・・同一の免税店での一日の購入金額(税抜)の合計額が五千円以上
②消 耗 品・・・同一の免税店での一日の購入金額(税抜)の合計額が五千円以上五十万円以下

 

(2)免税になるための購入手続(一般型輸出物品販売場の場合)

①外国人旅行者が旅券を免税店に提示し、購入記録票の貼付けと割印を受ける。
②外国人旅行者が購入した物品を国外に持ち出す旨の購入誓約書を免税店に提出する。
③消耗品の場合、免税店はその消耗品を指定された方法により包装して引渡す。

 

2、輸出物品販売場

国税の滞納がない等一定の要件を満たす消費税の課税事業者は、所轄税務署長の許可を受けることにより輸出物品販売場を開設することができます。輸出物品販売場には次の三形態があり、その数は平成二十九年四月一日現在、全国に四万五百三十二店あります(平成二十四年四月一日時点では四千百七十三店)。

 

(1)一般型輸出物品販売場

販売場を経営する事業者自身がその販売場においてのみ免税販売手続を行う、従来からある一店舗ごとの免税店です。

 

(2)手続委託型輸出物品販売場

平成二十七年四月一日以後開設できることとなったもので、販売場がある商店街等の施設内において免税手続カウンターを設置する事業者が、その商店街等内の他の免税店の免税販売手続を代理する形態の複数の店舗からなる免税店です。各免税店の事業者の外国語対応への不安や免税手続の煩雑さが解消されるとともに、外国人旅行者にとっても利便性が高いものとなっています。また、この形態の免税店で購入したものは、前記1.(1)の金額について、「一般物品」又は「消耗品」ごとにその商店街等の中にある各免税店での一日の購入金額(税抜)を合算して五千円以上となるかどうかの判定を行うことができます。

 

(3)港湾施設内における臨時販売場

外航クルーズ船等が寄港する港湾施設内に臨時に設置される免税店です。平成二十七年四月一日以後、新たな届出制度が始まったことにより、出店が容易になりました。

 

3、今後の展望

日本政府は、訪日外国人旅行者数について、二○二○年の東京オリンピック・パラリンピック開催時には四千万人、さらに二○三○年には六千万人にまで増やすことを目標にしています。また、外国人旅行者の旅行消費額の費目別構成比において、平成二十六年以降は買物代が宿泊費を抜いて一位となり、平成二十八年にはその金額が一兆四千二百六十一億円にまで増えています。この消費税免税制度が今後ますます利用されていくものと見込まれます。

【税理士 野村 俊之】

12月 07 2017

外国人労働者雇用における源泉徴収事務の留意点

新しく技能実習生を採用することになった会社の人事担当課長から受けた相談です。

Q・人事課長

当社でも来年から技能実習生を採用することになりました。当然、給与支払が発生するのですが、外国人の給与支払については特別な配慮が必要と聞いています。源泉徴収で何か注意することはありますか?

A・税理士

所得税法では国内で給与等を支払われる人を「居住者」と「非居住者」に分けており、外国人労働者だけでなく留学生・研修生などに給与等を支払う場合にもこの区分により源泉所得税の取り扱いに違いが発生します。

細かな規定はありますが、1年以上の在留期間で来日されている外国人の方の場合は通常「居住者」の取り扱いとなりますので、給与の処理に関しては国内で働く一般の労働者の方と同様の処理となります。

 

Q・人事課長

外国人労働者の方の国外居住親族の扶養控除について、最近法令が変わったと聞いていますが、どのように変わったのですか?

A・税理士

以前は年末調整では家族を申告するだけで扶養控除が認められていましたが、平成28年1月1日以後支払われる給与から国外居住親族で扶養控除等の適用を受ける場合には、当該親族の親族関係書類や送金関係書類の提出又は提示が義務づけられました。

従って、年末調整等で国外居住の家族を扶養家族として扱うためには給与所得者の扶養控除等(異動)申告書に「親族関係書類」と「送金関係書類」の両方の添付が必要となっておりますので、注意が必要です。

なお、「親族関係書類」は①当該国の戸籍の附票の写しなどの書類と該当者の旅券の写しか、②当該国政府又は地方公共団体が発行した書類で氏名、生年月日、住所等が記載されたものがそれにあたり、「送金関係書類」は①金融機関で国外居住親族に送金していることがわかる書類や、②国内居住者のクレジットカードによって、国外居住親族が商品等を購入しその商品等を受領したことが明らかとなる書類がそれにあたります。

資料の収集・保存をしっかりお願いします。

【税理士 宮川 淳】

12月 07 2017

税理士のにせものについて

昔からよく売れる人気のある商品には偽物がつきものです。今でもブランド品の偽物の摘発が行われたニュースを見かけます。実は税理士もまた然り。税理士法の第52条で「税理士または税理士法人でない者は、税理士業務を行ってはならない」という規定があります。報酬の有無にかかわらず、税理士の資格を持たない者が、税務申告の代理代行や申告書や申請書の作成、税金の相談といった税理士業務を行うことは税理士法違反となり、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処せられることになります。

ところが、税理士のにせものは毎年出没し、被害にあわれる納税者が後を絶ちません。皆さんは誰が作った申告書でも税務署に提出し納税してしまえば問題はないと思われるかもしれませんが、それは違います。では、実際にはどのような被害があるのでしょうか。

 

(1)申告書や申請書に署名してもらえない

所得税でも法人税でも、申告書や申請書には作成した税理士の署名、押印をする欄があります。税理士の資格のない者は、当然ここに署名をすることができません。税務署では署名のない申告書は提出した納税者本人が自分で作成したと考えます。

 

(2)税務調査に立ち会ってもらえない

税務署が納税者のところに調査に来た場合、にせ税理士は資格がないので立ち会うことができません。もし立ち会ったら税務署の職員に、にせものであることがばれてしまいます。申告書を作成した者が立ち会えないと、税務署から質問されても納税者だけでは対応することは難しいでしょう。適切な反証ができないと故意に税金を免れたと見なされることもあります。

 

(3)責任を取ってもらえない

そもそもにせ税理士には毎年改正される税法に対する知識が不足していることが多く(ちなみに税理士は年間36時間の研修を受けることが義務付けられています)、税務調査によって重大な間違いが見つかることがあります。納税者の知らないところで脱税がなされていたり、ずさんな計算が行われていれば、本来なら支払わなくてもいい延滞税(利息)や加算税(罰金)まで負担したり、青色申告の取り消しなどの処分を受けることがあります。にせ税理士はこれに対して責任を取りません。

 

(4)申告書の信用を失う

税務調査で脱税とされ追徴課税がなされると、納税者は税務署に対しても融資を受けている金融機関に対しても信用を失います。その後、税務署が定期的に調査が入る可能性が高くなります。

最近ではメールやファックスで格安の料金で税務申告を請け負う広告を送りつける業者もいます。税理士かどうか不審に思われる場合には、税理士バッジや証票で確認することができます。また、日本税理士会連合会のホームページでも全国の税理士や税理士法人の氏名や所在地を検索することができます。

納税は国民の三大義務の一つです。私たち税理士による適正な申告がその義務を支えているのです。皆さんには資格のない者が税理士業務を行うことができないということを御理解いただき、にせ税理士を見かけた場合には、被害にあわれる前にお近くの税務署または名古屋税理士会へご一報ください。

 

【税理士 岡﨑壮男】

11月 02 2017

相続税等における取引相場のない株式の評価について

中小企業の株式は、譲渡制限株式(会社法第2条17項)として発行されるのが通常です。上場企業のように株式が広く流通することはなく、交換可能な金銭的価値を客観的に把握することは容易ではありません。そこで、課税の公平を実現する観点から、財産評価基本通達では、相続税等における取引相場のない株式について、次のように定めています。

 

1.「取引相場のない株式」とは

上場株式及び気配相場のある株式を定義し、それ以外を「取引相場のない株式」と定めています。

 

2.「原則的評価方式」と同族株主以外の株主に適用される「特例的な評価方式」

取引相場のない株式は、原則的な評価方式を定め、同族株主に適用しています。一方で、支配権のない少数株主にまで同様の株価で評価することは適切でないことから、同族株主以外の株主は「特例的な評価方式」によって株価を計算することとなります。

 

3.「原則的評価方式」「特例的な評価方式」の具体的な評価方法

「取引相場のない株式」を発行している非上場会社といっても、上場企業に匹敵するような大企業から、極めて零細な企業まで様々です。これらを一律に扱うのでは、平等とは言い難いため、「原則的な評価方式」では、「業種」「従業員数」「総資産価額」「年間取引金額」によって、会社規模ごとに「大会社」「中会社」「小会社」に区分します。具体的な評価方法には、「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」があります。「類似業種比準方式」とは、取引相場のない評価会社の事業内容が類似する業種目に属する複数の上場会社の株価の平均値に、評価会社及び類似業種の1株当たりの「配当金額」「年利益金額」「簿価純資産価額」の比準割合を乗じて計算する方法です。また、「純資産価額方式」とは、評価会社の課税時期現在における資産を財産評価基本通達の定めによって評価した価額(相続税評価額)に評価替えするなどして1株当たりの評価額を計算する方法です。評価会社の規模区分が大きいほど、上場会社の株式の評価とのバランスを考慮して評価額を決定すべきであることから、評価額を計算する上で、類似業種比準方式を用いる割合が大きくなります。

「特例的な評価方式」では、配当還元方式が採用されています。これは、過去の配当実績を一定の還元率(10%)で割り戻して株価を簡便的に算出する評価方式です。経営に関与する度合いが低い少数株主にとっての株式の価値はもっぱら配当にあると考えられ、また、この計算方式によって、原則的評価方式と比較して安い株価が算定されるのが通常です。

 

4.「類似業種比準方式」の計算方法の税制改正

税制改正により、平成29年1月1日以降の相続から、「類似業種比準方式」の見直しが行われました。比較対象となる上場会社の株価が上昇している一方で、中小企業には業績に大きく影響のない企業も多いと言われます。中小企業の株価が想定以上に高く評価されることにより、円滑な事業承継に影響をきたす可能性があることから、これを是正する趣旨の改正です。このほかにも、会社規模区分の判定に係る金額基準等の見直しも盛り込まれています。

 

5.まとめと税制改正の有利不利

取引相場のない株式の評価は、会社規模や保有する株主が同族株主か否かによって、大きく評価方式が異なります。税制改正によって、純資産が多いが、利益金額が小さい会社は株価が上昇する要因となります。また、相続税法、所得税法、法人税法によっても評価の考え方が違う場合があります。株価が現時点でいくらとなるかは、中小企業経営者にとって重要な項目ですから、顧問の税理士に株価の算定を依頼し、直近の株価を把握しておきましょう。

 

税理士 三浦陽平

11月 02 2017

相続財産中に先代名義の未分割の遺産がある場合の取扱い

Q:この度、父が亡くなり、現在相続税申告のための準備中です。ところで父の田舎の実家は、いまだ亡くなった祖父名義のままで未分割の状態です。現在は父の兄(叔父)が住んでいますが、この土地建物について、事実上父の兄の所有財産であるとして今回の相続税申告から除外してもよいでしょうか。なお、父は、3人兄弟の末っ子で、祖父の死亡時には、祖母(父の母)と2人兄弟(一番上の兄は早世)でした。

 

A:相続税法第55条は、未分割の遺産について、「民法の規定による相続分の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するもの」と規定しています。しがって、先代(お爺様)の相続開始時点では、相続人はお婆様(父の母)と2人の兄弟(お父様とその兄)ということになり、お父様が法定相続分の4分の1を取得しているものとして申告する必要があります。

その後、先代(お爺様)の財産について遺産分割が行われ、今回の申告における課税価格の計算よりも多くなれば修正申告をすることになり、少なくなれば更正請求をすることができます。

未分割遺産の取扱いについては、申告期限までに遺産分割協議が整わず未分割のまま申告をした後で遺産分割を行うケースを解説書等でよく見かけますが、ご質問のように親の相続財産に先代の未分割遺産がある場合についても、これと同様に取り扱われることになります。

近時、不動産や株式等について未分割のまま放置されている財産が増えつつあるといわれており、ご質問のような問題も増えていくのではないかと思います。後々、世代が代わるにつれ相続人が枝分かれしてしまい、縁も薄くなるばかりか、書類収集も大変で手続が難しくなってしまいますので、早めの対策のためにも税理士に相談することをお勧めします。

税理士 小林正俊

 

11月 02 2017

「税を考える週間」

皆さんは、「税を考える週間」というものがあるのをご存じでしょうか。

毎年11月11日から17日までの一週間がこれに該当するのですが、当期間中は国民の皆様に国民生活と税の関わりの理解を深めていただき、納税意識の向上を図る目的で集中的にさまざまな広報広聴施策が実施されております。

この機会に、改めて税金が果たす役割について見直すとともに、税金(税務)に関する専門家である税理士の役割についてご紹介させていただきます。

 

税金の役割とは

私たちが豊かで健康的・文化的な生活を送るためには、道路や公園、水道などの整備や医療・福祉制度の充実、学校教育などの「公共サービス」が不可欠となりますが、これらの公共サービスを提供していくには膨大な資金が必要です。私たちが負担する税金は、これらの公共サービスを維持・運営していくための財源として、非常に重要な役割を果たしているのです。

また、税金には能力に応じて税を負担し合い、所得や資産の多い人に多くの税金を負担していただくことで国民の間の格差を縮めていく「富の再分配機能」や、景気が過熱ぎみのときには、税負担を増加させることで財政投融資を抑制し景気を引き締め、逆に景気が良くないときには減税などで消費や投資を促すことにより景気を刺激するなど「景気の調整機能」も有しているのです。

 

税理士の役割とは

税理士とは、法律によって国家から資格を与えられた税務に関する専門家です。税務に関する専門家として独立した公正な立場において、申告納税制度の理念に沿って納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることをその使命とし、その使命を果たすべく下記の業務を行い、様々な分野で活躍しております。

 

① 税務代理

確定申告、青色申告の承認申請、税務署の更正・決定等に不服がある場合の申立て、税務調査の立会い等について代理をします。

 

② 税務書類の作成

確定申告書、青色申告の承認申請書、その他税務署等に提出する書類を納税義務者に代わって作成します。

 

③ e-Taxの代理送信

e-Taxを利用して申告する場合、税理士が納税義務者の依頼を受けて代理送信します。

 

④ 税務相談

税金のことで困ったとき、わからないときなどに相談に応じます。

 

⑤ 会計業務

税理士業務に付随して財務書類の作成、会計帳簿の記帳代行、その他財務に関する事務を行います。

 

⑥ 補佐人制度

税務訴訟において納税義務者の正当な権利、利益の救済を援助するため補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに裁判所に出頭し、陳述(出廷陳述)をします。

 

⑦ 会計参与

会計参与として取締役と共同して計算関係書類を作成し、中小会社の計算書類の記載の正確さに対する信頼を高めます。

 

⑧ 社会貢献

主に確定申告期間における税務支援や租税教育への積極的な取り組み、裁判所の民事・家事の調停制度や成年後見制度への参画等を行うなど、税に関する専門的知識や経験を生かして社会貢献に努めています。

 

申告納税制度は、納税義務者が自ら申告書を作成して税額を計算し、納付するという民主的な制度でありますが、税務は毎年改正が行われるなど複雑・難解ですから正しい申告書を作成することが困難な場合があります。名古屋税理士会は、無料税務相談会などを積極的に開催していますので、こういうときには、税の専門家である税理士へ是非、ご相談ください。

 

税理士 中川 晋輔

 

10月 05 2017

空き家対策と税制

長期間人が住んでおらず放置されている空き家の増加が問題視されていますが、近年、このような空き家の発生を抑制する措置として、税制により適正な管理を推進する制度が導入されました。

まず、平成27年度の税制改正で講じられた固定資産税にかかる措置では、周辺の生活環境の保全を図るため、放置することが不適切な状態にある空き家(特定空家等)の所有者に対して市区町村長が必要な措置をとることを助言・指導したにもかかわらず、それらの助言・指導に応じず、必要な措置について勧告された場合には、その特定空家等にかかる敷地について固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外されることになりました。

次に、平成28年度の税制改正において、一定の空き家を売却処分した際の「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」が創設されました。この制度は、相続開始直前において被相続人(亡くなられた方)の居住の用に供されていた家屋を相続した相続人が、その「空き家」となった家屋等を譲渡した場合には、次の(1)~(3)の要件のもと、その譲渡益から3,000万円を控除することができるというものです。

 

(1) 適用対象となる家屋及び土地等

適用対象となる家屋は、昭和56年5月31日以前に建築された家屋(マンションなどの区分所有建築物を除く)であって、相続開始の直前において被相続人以外に居住していた人がいなかった家屋(以下「被相続人居住用家屋」という)であり、その被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地等についても適用対象となります。

 

(2) 適用対象となる譲渡

適用対象となる譲渡は、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に行う譲渡で、次に掲げるものです。ただし、相続の開始があった日から3年目の年の12月31日までの間にする譲渡に限られ、また譲渡の対価の額が1億円を超えるものを除くこととされています。

  1. 被相続人居住用家屋が、相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されたことがなく、かつ譲渡の時までに耐震リフォームを行うなどして、現行の耐震基準に適合する家屋であること。
  2. 被相続人居住用家屋を除却した後における、その敷地の用に供されていた土地等を譲渡する場合は、家屋については相続の時から取壊しの時まで、土地等については相続の時から譲渡の時までに、事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されたことがないこと。

 

(3) 添付書類その他

この特例は、確定申告書に、地方公共団体の長等が前記(1)および(2)の要件を満たすことの確認をした旨を証する書類その他の書類の添付がある場合に適用することとされています。

 

なお、従来からある「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」は、家屋及び土地等を譲渡した人自身がその家屋及び土地等を居住の用に供していたことが適用要件とされています。しかし、前述のとおり、今回の「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」では、居住の用に供していなかった相続人が、その相続後においても居住の用に供していないなどにより、空き家となったその家屋及び土地等を譲渡した場合にも適用対象とされる点に特徴があります。

【税理士 坂口美穂】

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