Category: タイムリーな税情報

4月 09 2012

名古屋税理士会研修部の役割

~税理士は納税者のため、一生懸命研修を受け、自己を磨いております!~

 名古屋税理士会研修部の近藤です。今回は税理士が納税者の皆様のために、いかに真剣に研修受講に取り組んでいるか、をお伝えしたいと思います。

1.「研修細則」について

 名古屋税理士会の会則・規則の中に「研修細則」があり、その中で税理士会員は1年間に最低でも36時間以上研修を受講するよう努めなければならない、と規定されています。

 研修の種類は、名古屋税理士会(以下「本会」という。)、日本税理士会連合会(以下「連合会」という。)、支部及び複数の支部(以下「支部等」という。)などが主催、共催又は後援する研修とされています。

 また研修の内容は税理士の業務に関連するものに限られ、税務・会計・法律・経済・経営等に関するもの、公益的業務に関するもの、情報処理に関するものとされており、例えば英会話とかお茶・お花・ピアノなどは含まれません。

2.平成23年度に受講した研修の数々

 ここで私自身が、平成23年4月以降現在まで受講した研修の一例をご紹介します。
(1) 本会の研修:「法人税の総合研究(研修)」(4回の連続研修)、「名古屋税務研究所の研究発表会」、「税法データベース研修会」、「名古屋国税不服審判所長による研修会」、「事業承継問題に関する研究発表会」、「本会特別研修会~法人税改革の世界的潮流と日本の動向~」など。
(2) 連合会の研修:「第1回全国統一研修会~平成23年度税制改正の動向/資産税実務の留意事項~」、「第2回全国統一研修会~『資本の部』を理解しよう~」など。
(3) 支部等の研修:例年3月と8月を除く毎月1度開催される支部集会の日に行われる支部研修を受講。テーマは税制改正など。

3.税理士が、こんなに研修を受ける理由(わけ)

 もちろん、皆様方納税者のため、と大きな声で申し上げたいと思います。税法はご存じのように、毎年のように変わります。会計についても、世の中の変化に伴って形を変えて行きます。税法以外の法律も変化し、その結果税務や会計処理も変わることがあります。経済状況の変化・経営を取り巻く環境の変化等々、毎年毎年目まぐるしく変化して行くことは避けられない状況です。

 そんな環境下で、税理士は、一旦税理士登録をした後は、その資格のもとに仕事をしていきますが、税法がどんどん変わっていく今日の状況では、昨日と同じこと、一年前と同じことを繰り返していたら大変なことになってしまいます。だから税理士は研修を受け、新しい知識を常に吸収しているのです。

 納税者の皆様へ、こうして税理士は、懸命に研修受講をし、日々研鑽を積んでおります。税制や会計・経済・経営などに疑問・質問がありましたら、どうぞお気軽にお近くの税理士にご相談ください。きっと信頼できる回答が得られると確信しています。

 私の所属している「名古屋税理士会研修部」はそのために存在しているのです。

(税理士 近藤実晴)
4月 09 2012

~相続税の連帯納付義務制度について~

1 連帯納付義務制度の内容とその問題点

 相続税の「連帯納付義務」とは、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得したすべての者は、その相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税について、その相続又は遺贈により受けた利益の価額に相当する金額を限度として、相互に連帯して相続税を納付しなければならない(互いに連帯納付の責めに任ずる)、というものです。
 つまり、共同相続人の誰かが当人の支払うべき相続税を未納にしていると、他の共同相続人がその未納の相続税を負担しなければならない、ということです。自身が納付すべき相続税はしっかり納税している相続人からみれば、理不尽な制度であると言わざるを得ません。
 この連帯納付義務の制度は、相続人等が連帯納付義務の存在を十分に認識していないことや、他の共同相続人等の相続税の納付状況は互いに把握しがたいという事情などに起因して、連帯納付義務者が突然に、しかも多額の延滞税を伴って納付を求められるケースがあるなど、かねてよりいくつかの問題点が指摘されてきました。

2 税制の対応

 こうした問題を受けて、平成23年度税制改正では一定の要件のもと、連帯納付義務者が連帯納付義務を履行する場合の延滞税を利子税に変えるという措置が取られました。
 また、平成24年度税制改正案では相続税の連帯納付義務について、緩和措置が講じられる予定です。その緩和措置とは、次の場合に相続税の連帯納付義務を解除する、というものです。

  1. 申告期限から5年を経過した場合(ただし、申告期限等から5年を経過
    した時点で連帯納付義務の履行を求めているものについてはその後も継続して履行を求めることができる、とされています。)
  2. 納税義務者が延納又は納税猶予の適用を受けた場合
     (注)当該改正案は平成24年4月1日以後に申告期限等が到来する相続税について適用される見込みです。ただし、同日において滞納となっている相続税についても同様の取り扱いとします。

 この税制改正案が国会で可決・成立すれば、相続発生後相当の期間が経過した後に連帯納付の履行を求められることで、思いもよらない多額の税負担が発生してしまうというケースはなくなりそうです。

(税理士 中川晋輔)
4月 09 2012

住民税について

1.住民税という税金あるの?

一般に、住民税といいますと、その用語からして、個人に課税されるものとのイメージが強いかと思われますが、法人に対しても課税されます。会社を経営されている方には、法人事業税などと共に馴染みが深いかもしれません。住民税は、都道府県民税と市町村民税に分けられ、更に納税義務者別に個人・法人に対するものに区分されることになります。したがいまして、住民税という税目が法令上存在するのではなく、住民税とは、都道府県民税と市町村民税を合わせた総称を意味します。また、個人・法人別に、個人住民税、法人住民税などと用いられることもあります。
以下では、収入のある個人に身近に関わってくる個人住民税について、その概要(図表:出典 総務省ホームページ)を国税である所得税との比較を交えながら、確認してみます。

2. 個人住民税の概要

個人住民税は、税率の観点からは、均等割と所得割という2つに区分されます。
均等割とは、所得税にないもので、年額4,000円が標準額(都道府県1,000円、市町村3,000円)として定められています。
一方、所得割は、所得税の計算の仕組みと似ています。
所得税と個人住民税の仕組みにおいて、異なる点としては、例えば、①課税方式、②課税標準(いわゆる所得)、③税率、④所得控除があげられます。

  1. 課税方式
    所得税が申告納税方式(納税者又は勤め先である源泉徴収義務者の申告、年末調整により税額を確定)であるのに対し、個人住民税は賦課課税方式(市町村が税額を計算、確定)となっています。
  2. 課税標準
    所得税が現年の所得金額であるのに対し、個人住民税の所得割は前年中の所得金額となっています。したがいまして、個人住民税が給料より天引きされているサラリーマンの方を例にとりますと、通常、5月~翌年6月のサイクルで前年の所得金額に対する個人住民税が現年の給料より徴収されますので、個人住民税は後払いの性格を持っているといえます。
  3. 税率
    所得税が5%~40%の累進税率であるのに対し、所得割は、一律10%(都道府県4%、市町村6%)の標準税率となっています(分離課税分を除きます)。
  4. 所得控除
    特にそのうちの人的控除と呼ばれるもの(例えば、基礎控除、配偶者控除、扶養控除)などについては、所得税における控除額よりも、個人住民税における控除額の方が小さく設定されています。したがいまして、個人住民税の課税最低限は、所得税のそれよりも低くなります(モデルケースとしての夫婦子2人の給与所得者で、55万円の差が生じています)。

ここに示した相違点は、いくつかあるうちの一部ですが、それぞれ所得税と個人住民税の性格の違い(例えば、個人住民税は、地域社会における費用を皆で分担し合う応益課税という考え方があるといわれています。)から生じていると考えられます。

3.自分で計算してみる

所得税の確定申告をされている方は、比較的、個人住民税の仕組み・計算過程に関しても知識が深いかもしれません。サラリーマンのような勤め人の方の中には、社会保険料と同じように、毎月天引きされることから、あまり意識されたことがない方もみえるかもしれません。各人に対し、毎年6月前後で、勤め先を通じて、個人住民税の計算明細書の交付があるはずです。まだあまり意識されたことのない方は、今年、一度じっくり、給与所得の源泉徴収票(平成23年分)と個人住民税の計算明細書(平成24年度)を比較してみて、その仕組みの違いなどを確認してみるのも、身近な税を知るよい機会かもしれませんね。

個人住民税の概要

(税理士:寺澤 典洋)
3月 05 2012

「帳簿書類の保存に不備があると・・・」

1.はじめに

 帳簿書類の整理や保存は、面倒ですし場所をとりますので、ついついなおざりになってしまいがちですが、どういう問題が生じるおそれがあるか、消費税を中心に解説いたします。

2.消費税と帳簿等の保存

 消費税は、大雑把に申しますと、お客様からお預かりした消費税から、仕入れ先に支払った消費税を差し引いて計算するしくみです。
 仕入れ先に支払った消費税を差し引くことを「仕入税額控除」といいますが、帳簿・請求書の保存がない場合には、この「仕入税額控除」ができません(消費税法30条7項)。
 たとえば、税込の売上げが105万円、税込の仕入れが84万円としますと、通常の場合は5万円から4万円を差し引いた1万円が税額となるのですが、仕入れに関する帳簿・請求書の保存が全くない場合は、4万円の仕入税額控除が認められず、税額5万円となります。

3.最高裁判所の判断

 消費税の仕入税額控除に関する帳簿・請求書の保存について、最高裁は次のように判断しています。
 「税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要する」
 最高裁は、納税者が税務職員に対して格別理由がないのに帳簿等の提示を拒み続けたという場合は、仮に帳簿等の保管がされていたとしても「保存」はなかったと判断しています。したがって、税務調査に支障が生じるような帳簿書類の不備がある場合には、その程度によっては全部又は一部の「保存」が認められないケースがありうると考えられます。

 ちなみに、この場合は、法人税の青色申告についても、その取消しが認められると判断しています。

 なお、この「保存」は後出し不可であり、あくまで税務調査の際に「適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存すること」が求められています。

4.推計課税等

 法人税や所得税は、所得(税務上の「もうけ」)を計算して、それに税率を乗じて計算する仕組みです。しかし、帳簿書類が不備であるなどの理由で所得が確認できない場合は、従業員数などの間接的な情報により推計されることがあります。これを推計課税といいます。
 3.のような帳簿書類の不備があった場合、まず法人税について、青色申告が取り消され、青色申告が取り消されることにより推計課税ができるようになりますので(法人税法131条)、法人税の推計課税が行なわれ、さらに消費税の推計課税が行なわれる、というおそれがあります。
 そしてこの場合は、上述のとおり、保存が認められない全部又は一部の仕入れについて、仕入税額控除の適用がありません。
 さらに、当初申告より税額が増えることになりますので、過少申告加算税や延滞税も別途課されます。隠ぺいや仮装があると、重加算税や刑罰の対象にもなります。

5.おわりに

 消費税は、付加価値税といわれることもありますとおり、「付加価値」に対して課される税であり、売上税ではないため、仕入れについても推計するのが妥当ではないか、という批判や、そもそも消費税は推計課税が法定されていない(所得税法や法人税法には推計課税に関する規定があります。)という批判が考えられますが、いまのところは上記のような取扱いがなされております。
 なお、税務職員が税務調査を行う権限のことを質問・検査権というのですが、これには一定の範囲があります。また、帳簿等の保存には一定のルールが定められております。詳しくは、税理士にご相談ください。

(税理士:佐藤大祐)
3月 05 2012

平成24年度税制改正のポイント

給与所得者に対する課税が見直されます!

平成24年度税制改正大綱によると、個人所得課税における主要改正点の1つに、「給与所得控除の見直し」があります。今回は、「給与所得控除の見直し」について解説します。
給与所得控除の見直し

1.給与所得控除の上限設定

①給与所得控除とは
給与所得控除とは、給与所得者の所得税や住民税を計算するときに、『給与収入から差し引ける分』をいいます。自営業者の場合は、商品の売上金額から仕入原 価や販売経費などの、必要経費を差し引くことができます。給与所得者の場合は、この必要経費の代わりに、給与所得控除が認められているわけです。給与所得 は、「給与収入-給与所得控除」という算式で求められます。
表1は、現行の給与所得控除額を簡易に求める表です。
(※表1)

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%,ただし65万円に満たない場合には65万円
180万円超  360万円以下 収入金額×30%+18万円
360万円超  660万円以下 収入金額×20%+54万円
660万円超 1,000万円以下 収入金額×10%+120万円
1,000万円超 収入金額× 5%+170万円

たとえば、給与収入が500万円の給与所得者は、給与所得控除額は154万円であり、給与所得を求めると500万円-154万円=346万円ということになります。
これが、年収2000万円の給与所得者となりますと、給与所得控除額は270万円となり、その給与所得を求めると2000万円-270万円=1730万円となります。
上記表によりますと、収入が増加するにつれて給与所得控除も常に増えていくことになっていますが、改正法はこれに上限を設けようとするものです
②今回の改正内容
今回の改正によって、給与所得控除額は一律245万円が上限とされました。この改正の影響を受けるのは、年間の給与収入が1500万円超の納税者で、税負担は増加します。

2.特定支出控除の見直し

 給与所得者が下記イ~ホの支出をした場合、その年中の特定支出の額の合計額が給与所得控除額を超えるときは、確定申告によりその超える金額を給与所得控除後の金額から差し引くことができる制度(現行制度)があります。
イ 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出
ロ 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出のうち一定のもの
ハ 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出
ニ 職務に直接必要な資格(一定の資格を除きます。)を取得するための支出
ホ 単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出のうち一定のもの
 これを給与所得者の特定支出控除といいます。改正点は、次の通りです。
①特定支出の範囲の拡大
特定支出の範囲に次に掲げる支出が追加されます。
イ 職務の遂行に直接必要な弁護士、公認会計士、税理士、弁理士などの資格取得費
ロ 職務と関連のある図書の購入費、職場で着用する衣服の衣服費及び職務に通常必要な交際費(勤務必要経費)*ロは、65万円が限度となります。
②特定支出控除の適用判定・計算方法の見直し
その年の特定支出の額の合計額が、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額を超える場合(現行:給与所得控除額を超える場合)は、その超える部分の金額を給与所得控除額に加算できることになります。
イ その年中の給与等の収入金額が1,500万円以下の場合 その年中の給与所得控除額の2分の1に相当する金額
ロ その年中の給与等の収入金額が1,500万円を超える場合 125万円

3.適用関係

上記の改正は、平成25年分以降の所得税及び平成26年度分以降の個人住民税について適用されます。

(税理士:国枝宗徳)
3月 05 2012

「税制改正に関する建議」について

「社会保障と税の一体改革」に関する議論が活発に行われています。消費税の増税ばかりに注目が集まっていますが、すでに昨年来、年少扶養控除の廃止や子ども手当の減額、復興増税に伴う所得税・住民税の引き上げ等が決まっており、これに新たに消費税の増税が加われば、国民への税負担は一段と増し、個人の生活に大きな影響を及ぼすこととなります。
こういった税制改正の動きに対し、税理士としての意見や考えを問われることがよくあります。そこでここでは、税理士会が毎年行っている「税制改正に関する建議」についてご紹介したいと思います。
建議とは、一般的に役所に意見を申し立てることを意味します。税理士法第49条の11には、「税理士会は、税務行政その他租税又は税理士に関する制度について、権限のある官公署に建議し、 又はその諮問に答申することができる。」と定めらており、この規定に基づいて税理士会では、財務省、国税庁、総務省、政府税制調査会等に「税制改正の建議」を行っています。
「平成24年度・税制改正に関する建議書」では、税務に関する専門家として納税者の立場に立って、税制のあるべき姿を、次の5つの基本的視点から表明しています。
(1) 公平な税負担
公平な税負担は、税制を考える上で最も基本的な視点であり、納税者が負担能力に応じて分かち合うという意味である。また、公平には、水平的公平、垂直的公平とともに世代間の公平の問題があり、それらが相互に補完し合うバランスのとれた税制を構築していく必要がある。
(2) 理解と納得のできる税制
わが国の国税のほとんどは申告納税方式によって税が確定し、賦課課税方式による個人住民税なども所得税の確定申告を基礎としている。申告納税制度の下では、納税者自らが課税標準及び税額を計算し申告を行うので、租税制度は納税者が理解できるものであり、また、その目的や内容についても納得できるものである必要がある。
(3) 必要最小限の事務負担
租税収入に係る費用は、税務行政庁側の費用だけでなく納税者側の事務費用も併せて認識されるべきであり、過度の負担を納税者に強いることは避けなければならない。
(4) 時代に適合する税制
税制には、納税者の経済活動における選択を極力歪めないよう中立であることが求められるが、一方では財政や経済とも密接な関係を有している。経済社会の構造変化に応じて税制が適切に対応していかなければ、新たな不公平が生じるなどの弊害を招くことになる。したがって、税制を常に時代に適合するものとすべく、その見直しを継続しなければならない。
(5) 透明な税務行政
透明な税務行政は、公平な税負担の確保と申告納税制度を維持発展させるためには必要不可欠であり、納税者から更なる信頼を得るための施策を行っていく努力が求められる。
この5つの基本的視点の下、同建議書では、所得区分の見直しや、交際費課税に関する要望など30項目の税制改正建議のほか、「確定決算基準の維持」、「消費税の改正」、「国税・地方税の申告納税の一元化」の3項目に対する基本的な考え方や問題意識を表明しています。
こういった税理士会が毎年行う建議が契機となり、最近では、特殊支配同族会社の役員給与損金不算入制度の廃止(平成22年度)、同族会社の留保金課税制度の廃止(平成18年度)などが実現されています。
税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることが税理士の使命であり、税理士会の意見表明は、まさに税理士の使命に基づく税理士会の義務なのです。税理士会は納税者に一番近い税務の実務家として、今後も税制の適正化に向けて積極的に提言していきます。

(税理士:加賀元浩)
2月 06 2012

医療費控除について

高齢化社会の進展とともに、医療費の家計に占める割合が高くなってきています。厚生労働省の発表によると、平成21年度の国民医療費は36兆67億円、前年度に比べ1兆1983億円、3.4%の増加となっています。また、人口一人当たりの国民医療費は28万2400円、前年度に比べ3.6%増加しています。

国民医療費の年次推移

国民医療費の年次推移

 このように増加する医療費は家計を圧迫しています。いかに医療費を低く抑えるのかという問題は、国の財政においても家計においても解決しなければならない共通の課題といえるのではないでしょうか。
 この医療費負担に対応するために税制においては「医療費控除」として、その手当がなされています。多額の医療費を負担する場合には納税者の支払能力を大きく害するであろう点を考慮して導入されました。この制度の歴史は古く、GHQの要請によって1949年に結成された日本税制使節団による報告書(通称シャウプ勧告)を受け、昭和25年の税制改正において採用されています。
 さて医療費控除の計算方法ですが、まず1年間に支払った医療費を合計します。その合計金額から10万円(正確には所得金額の5%と10万円のいずれか少ない方)を差し引いた金額が医療費控除額となります。この差し引く10万円とは、一般的にどの家庭でも通常支出するであろうと考えられている見積もり金額であり、税金の計算上は考慮しないこととされています。つまり10万円を超えた部分だけを所得金額から差し引くことにより、税負担を軽くしようということです。ただし、医療費控除額はいくらでも良いものではなく、最高で200万円までとなっています。また、支払った医療費を補填する保険金等がある場合には、医療費の金額から差し引くことになります。

医療費控除額の算式
{(医療費)-(保険金等)}-(10万円と所得金額の5%のいずれか少ない方)=医療費控除額

 医療費控除と対象とされる「医療費」は、次の三つの要件に合致するものに限られています。
①次のうち一般的な水準を著しく超えない部分の金額。したがって、あまりに高額な場合には認められない場合もあります。
(イ)医師または歯科医師による診療又は治療の対価
(ロ)治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価
(ハ)病院、診療所又は助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価
(ニ)あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師等による施術の対価
(ホ)保健師、看護師又は准看護師による療養上の世話の対価
(ヘ)助産師による分べんの介助の対価

②自身又は生計を一にする配偶者やその他の親族の医療費であること。
この「生計を一にする」という表現ですが、同居していれば、その要件を満たすことになると考えられがちです。しかしながら、例えば、勤務・修学・療養費等で別居している場合であっても、余暇には起居を共にしている場合や、常に生活費・学資金・療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいる場合を除き、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。したがって、同居か別居かという点のみでは生計を一にするのかしないのかを判断することはできないのです。

 ③その年中に支払った当該医療費であること
医療費控除額の計算は年ごとに行い、その年内に実際に支払ったものだけを計算の対象とします。例えば12月に治療を受けたけれども、支払いは翌年1月になった場合には、その治療を受けた年分の医療費控除の対象とはならず、翌年分の対象となります。

 以上を確定申告において医療費控除を受ける際の参考としていただければ幸いです。また個別具体的な内容につきましては税理士もしくは最寄りの税務署にご相談ください。

(税理士 斎藤浩基)
2月 06 2012

情報システム委員会にて検討中の課題

 名古屋税理士会には、11の部会と2つの委員会、1室、1研究所が設置されており、この2委員会の中でITに関する所掌をしているのが『情報システム委員会』であります。
 この情報システム委員会は、平成9年5月の理事会で承認され、設置された情報基盤整備特別委員会がその前身であり、その後、平成17年6月に電子化対応特別委員会へ改組、そして平成21年6月に現在の情報システム委員会へ改組されました。
 つまり、情報システム委員会の歴史は、まさに、インターネットをはじめとしたIT技術の普及が我々税理士業界に与えてきた影響の歴史でもあります。

 本年度、情報システム委員会がすべきことは、以下の3点であります。
 (1)電子申告の普及促進
 (2)税理士会会員のITリテラシーの向上
 (3)会務・事務局の効率的運営を計るためのIT化
 この中でも、当委員会の設置当初からの最重点項目である電子申告においては、現在利用率の伸びが頭打ちになっていることから、更なる利用拡大のために
  ①深耕策:未だ利用していただけない税理士にご理解いただき利用していただく
  ②拡大策:現在利用している税理士が、全ての税目における全ての申告、申請等の手続きでの100%利用及び大企業の利用促進
  ③勧奨策:所得税を中心とする確定申告時期における一般納税者への周知
が必要であります。
 また、名古屋国税局はもとより、隣接の東海税理士会との情報交換を密にし、電子申告をより使いやすいものにしていく改善要望等を提言していきたいと考えております。
 電子申告以外に、上記(2)及び(3)について、本年度の当委員会では
『情報システム委員会は、どんどん新しいことにチャレンジしよう』
をスローガン(?)に、近年急速に利用拡大している、ツイッターやフェイスブックといったSNS(ソーシャル・ネットワーク・システム)を税理士業務に活用できるような研修会を開催、さらには昨今、急速に市場に普及してきている携帯タブレットを使った会議のペーパーレス化の実現に向けた取り組みなども検討中であります。
 部ではなく委員会ですから、最終的な執行をしない代わりに、自由に情報を集め、研究したことをまとめて本会に具申・提言していくことができる位置づけであると理解しております。上記のような自由な発想から生まれる新たな提案を、税理士会および会員のために、これからも積極的に続けて行きたいと思っております。

(税理士 深川祐司)

2月 06 2012

平成23年~24年の主な税制改正について

 平成23年度の税制改正は、政局の不安定さに加え、東日本大震災への対応などで極めて異例の、複雑な経過をたどりました。しかし、紆余曲折を経ながらも昨年11月30日の修正法案成立をもって、ようやく一応の決着を見ました。ただし例年と異なり当初の改正法案がほぼそのまま成立・公布されたわけではありません。本稿では、平成22年12月に公表された平成23年度税制改正大綱(以下、当初案という)を起点として、納税者にとって特に重要性の高い主要な改正項目につき、どの項目が成立し(内容が一部修正されたものを含む)、または未成立となったのか、さらに平成23年度には未成立になったものの、平成24年度税制改正大綱(平成23年12月10日閣議決定)に引き続き盛り込まれているものなどについて概説します。
【成立した税制改正法案】
 法人課税関係の改正法案はほぼ当初案どおりに改正されました。成立した事項は以下のとおりです。①法人税率の引き下げ②減価償却制度の見直し③欠損金の繰越控除制度の見直し④貸倒引当金の適用対象法人の見直し⑤一般寄附金の損金算入限度額の縮小
 個人所得課税関係で成立した事項は以下のとおりです。①事業所得者等の帳簿記載保存義務の強化②個人住民税における退職所得の10%税額控除の廃止
 国税通則法関係で成立した事項は以下のとおりです。①税務調査手続の法制化②更正の請求の期間の延長等③更正の請求の範囲の拡充③更正等の処分の場合の理由附記の導入
 また、当初案にはなかったものですが、東日本大震災の復興に資するために成立・公布された震災復興財源確保法(修正法案と同時に成立・公布)に含まれている事項は以下のとおりです。①復興特別法人税(10%上乗せ措置)の創設②復興特別所得税(2.1%上乗せ措置)の創設③個人住民税の均等割りの引き上げ
【未成立となった主な税制改正法案】
 相続税・贈与税関係で当初案に盛り込まれていた事項(相続税の基礎控除の引き下げ、最高税率の引き上げなど)はすべて未成立となりました。ただし、これらの事項は通常の税制改正とは別枠の、消費税関連の改正(消費税率の見直しなど)を含む税制抜本改革の中で検討されることが予想されます。その他、個人所得課税関係では、成年扶養控除制度の縮減が、国税通則法関係では、納税者権利憲章の制定などが未成立となりました。
【未成立となったが、平成24年度税制改正大綱に盛り込まれているもの】
 個人所得課税関係で当初案に盛り込まれていた事項のうち、次の事項は平成24年度税制改正大綱に盛り込まれました。①給与所得控除額の上限設定②特定支出控除制度の拡充③短期就労役員退職所得の2分の1課税の廃止

(税理士 佐藤豊和)
1月 10 2012

納税者権利憲章の即時制定を!

 10月11日の政府税制調査会において、納税者権利憲章の制定を今年度は見送るとの発表がなされました。
「納税者権利憲章」についての明確な定義はありませんが、2003年にOECD租税委員会がまとめた「納税者の権利と義務プラクティクス・ノート」によると、「納税者の税務に関する権利・義務をわかり易い言葉で要約し、かつ説明して、こうした情報を多くの納税者に周知させようとする試み」と定義されています。
納税者権利憲章は、2009年の衆議院選挙マニフェストにも掲げられた民主党の税制改革における重要公約の一つでもあり、政府税制調査会専門家委員会での議論をふまえ、平成22年度税制改正大綱やその後の税制改正法案でも国税通則法の改正において法定することとしていました。
 この平成22年度税制改正大綱には、特に「納税者主権の確立へ向けて」との副題を根本理念として掲げ、「議会制民主主義における税のあり方は、あくまでも税を納める主権者たる国民の立場に立って決められるべきものです。国民主権にふさわしい税制を構築していくため、納税者の税制上の権利を明確にし、税制への信頼確保に資するものとして『納税者権利憲章(仮称)』を早急に制定します。」と、我が国の税制における基本理念を明確にするための指針としての「納税者権利憲章」の制定に強い意志を表明していました。
 名古屋税理士会においても、平成24年度税制改正の意見書において、「納税者権利憲章を速やかに法定し、税務調査などの公権力の行使時には納税者に交付すること。」との要望を掲げ、法定化を期待してきました。
 それは、申告納税制度の更なる発展をめざすなかで、①情報提供や支援を受ける権利、②不服申立の権利、③正当な税額のみを負担する権利、④予測可能性の確保、⑤個人情報の確保、などを明記することによって、納税者の権利保護と税務行政の信頼確保、並びに、税務行政の円滑な執行を図るためには、納税者権利憲章の速やかな制定が必要だからです。
 また、我が国の租税制度のおいては、納税者の権利保護するための規定が乏しく、納税者の権利利益の保護及び救済が不十分であり、憲法31条の適正手続きの保障を充実すべきであるとの指摘がかねてからなされてきました。
 納税者権利憲章はOECD加盟30か国のうち、既に24か国制定され(2009年末現在・OECD調べ)、G7加盟国でみれば5か国で制定されていることなどからもわかるように、我が国の税務行政が諸外国と比較しても立ち遅れていると言わざるを得ません。その制定は国税通則法の改正とともに早急に対応すべき税務行政の根幹に係わる極めて重要な課題なのです。
 しかしながら、今回、民主党税制調査会と野党の税制調査会との間でなされた協議では、「(納税者権利憲章の)この『権利』という言葉が哲学として相入れない」などとの強い反対があって、残念ながら今年度は見送るとの決定が政府税制調査会においてなされてしまいました。
 税務行政の信頼確保と円滑な執行を図り、ひいては、申告納税制度の更なる発展をめざすには、納税者の権利利益を確立することが必要不可欠です。
 そのための「納税者権利憲章」の一日も早い制定を、強く望みます。

(税理士 萩原芳宏)

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