10月 04 2010

税理士の使命は納税義務の適正な実現

 「税理士と公認会計士はどう違うのですか。」
 時々、こんな質問をされることがあります。どちらも会計のことで同じような仕事をしていると思うのだが、どこが違うのかよく分からない。こんな思いが皆さんのなかにもあるのではないでしょうか。そこで、似たもの同士に思われがちな両制度の違いについてお話し、加えて名古屋税理士会の税理士制度に対する取り組みについて、ご紹介したいと思います。
 さて、両者の違いは、それぞれの制度の法律に記載された第一条(使命)を比べる事により、明確になると思います。
税理士法 第一条(税理士の使命)
 税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。
公認会計士法 第一条(公認会計士の使命)
 公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。
 どうでしょうか。税理士制度と公認会計士制度とは異なる制度であることがおわかり頂けると思います。つまり、税理士は税務の専門家であり、その使命は納税義務の適正な実現にあり、その為に独立した公正な立場において業務をおこなうのです。また、主に法人税や所得税の適正納税の為には、専門的な会計知識が必要不可欠であり、税理士は財務諸表の作成や会計帳簿の記帳代行等の業務(税理士法第二条第二項に規定)を積極的に行っているところであります。この点が、税理士と公認会計士が一般的に混同される要因の一つではないでしょうか。
 次に、名古屋税理士会の税理士制度への取り組みのなかから、皆さんに関係する主なものについてご紹介したいと思います。

  1. 税務支援体制 税理士の公共的使命、社会貢献の見地から、納税者の信頼に応える為の取り組みです。具体的には、所得税確定申告期における無料税務相談を筆頭に記帳指導等を行っています。平成21年度実績として名古屋税理士会全体で、計15万4500名の納税者を対象に税務支援をおこないました。
  2. 租税教育の出前授業 小・中学校及び高等学校において、租税に対する認識の為に行われる租税教室に多数の税理士を講師として派遣しています。 税理士170人を講師として用意し、平成21年度実績は255回開催しました。
  3. 官公署への建議 建議とは、自ら希望を出して意見を開陳することであり、具体的には、各年度の税制改正に対する日本税理士会連合会の建議にあたり、要望項目の取りまとめをおこなっています。なお、建議については税理士法第四十九条の十一に規定されています。
  4. 会社法制及び会計制度の変革への対応 会計の専門知識を生かし、中小企業の会計指針の適切な運用及び会計参与制度の普及定着を図ることに努めています。

 以上、税理士制度の使命である納税義務の適正な実現の為に、名古屋税理士会が具体的に取り組んでいる主なものをご紹介しました。
 最後に、税務の問題は、国家財政の根幹を為すと共にその在り様は我々一人一人に大きく関わってくるものであります。名古屋税理士会は、税理士の使命に則り、税務の専門家として、独立公正な立場から、時代の要請に応え、納税義務の適正な実現に積極的に取り組んでいきます。

(税理士 古田良典)
10月 04 2010

改正税法 ~法人税を中心にして~

 平成22年の税制改正において、廃止となった制度と新たに導入された制度をひとつずつ取り上げ、簡単な説明を加えたいと思います。

特殊支配同族会社業務主宰役員給与の損金不算入制度の廃止

 当初より批判の多い、中小企業いじめともいえるこの制度に、我々税理士も会を挙げて廃止運動に力を入れた結果、ようやく廃止となりました。この点については、中小企業を支援する税理士として大変喜ばしく思っております。
 しかしながら、22年の税制大綱には「給与所得控除を含めた所得税のあり方について議論をしていく中で、個人事業主との課税の不均衡を是正し、「二重控除」の問題を解消するための抜本的措置を平成23 年度税制改正で講じることとします。」と述べられており、今後の成り行きに注目が必要です。

グループ法人税制の導入

 グループ法人税制というと、その対象は大企業の企業グループの事で、中小企業は関係がないという印象を受けますが、それは大きな間違いです。
 今回のグループ法人税制は、選択や届出といった事は関係なく、取引時点において100%持株関係(完全支配関係)があれば、強制的に適用されるという事になっています。また完全支配関係であれば資本金額に関わりなく、完全支配関係のトップが法人・個人に関係なく制度適用となるため注意が必要です。
 このグループ法人税制で講じられた措置には以下のようなものがあります。大胆にくくれば、完全支配関係のあるグループ内の法人間取引について課税を繰延べる措置といえましょう。

・資産の譲渡取引等
資産の移転によって生じた譲渡損益は、当該資産がグループ外に移転する時に、その移転を行った元の法人において計上することとされました。

・非適格株式交換等
完全支配関係がある法人間の非適格株式交換に関して、完全子法人等の有する資産の時価評価はしないこととされました。

・寄付
支払法人において全額損金不算入とし、受領法人において全額益金不算入とされました。

・現物配当(みなし配当を含む)
適格現物配当した場合は、直前の簿価による譲渡をしたものとみなすとされました。また、組織再編成の一形態として位置づけ、譲渡損益の計上を繰延べる等一定の措置が講じられることとなりました。

・受取配当等
完全支配関係のある内国法人から受ける受取配当金について、負債利子を控除せず、その全額を益金不算入とする事とされました。

・株式の発行法人に対する譲渡
完全支配関係のある内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する場合、その譲渡損益を計上しないこととされました。

 これらのグループ法人税制により、繰延べられた損益の把握といった事務が増加するといった事が予想される一方で、グループ内の資産を自由に最適化できるというメリットも想像され、柔軟で機動的な資産再編成が活性化される事でしょう。

(税理士 土屋広高)
10月 04 2010

所得税改正の潮流~「民主党政権」は、所得税をどう変革しようとしているか~

 民主党政権になって約1年が経とうとしています。確かに今夏の参議院選挙においては、民主党は敗北を喫しましたが、昨年の衆議院選挙にて民主党が300議席超という議席を得た以上、あと3年間は民主党の考える「所得税改正」のレールに従ったものとなるのではないかと思われます。
 さて、民主党政権は所得税制をどのように変えたいと考えているのでしょうか?
 ひとつの回答として、「税制大綱」があります。

  1. 「所得控除」から「税額控除および手当」へと流れを変えること
  2. 「税と社会保障共通の番号制度」の創設

以上の二つが税制大綱にうたわれています。
 民主党は、なぜ「所得控除」から「税額控除および手当」へと変えようとしているのでしょうか。
 その理由として、(1)所得控除が、結果として高所得者に有利な制度となっていること。(2)税額控除とすることにより、低所得者層の方が、相対的に高所得者よりも減税効果をより享受することができること。(3)定額の手当の支給は、相対的に支援の必要な人に、実質的に有利な支援をおこなえるものであることなどがあげられます。
 今回の税制改正によって、子ども手当導入と併せて、年少扶養控除(15歳以下)の廃止などが打ち出されました。その具体的な所得階層ごとの税負担等の増減状況について、表にまとめてみました。


子供2人 配偶者は考慮していない
児童手当、子ども手当は税負担のマイナスとした

 表を見ていただければわかるように、比較的年収の低い世帯においては、可処分所得が増加することになります。たとえば、年収300万円の世帯においては、約15万円の可処分所得が増加することになります。
 また、相対的に年収の高い世帯においては、可処分所得の減少となり、年収2000万円の世帯においては、約126万円減少することになります。
 したがって、今回の「扶養控除廃止」「子ども手当創設」は、低所得者と高所得者との差を縮めることになり、所得格差をいくらか緩和することに貢献すると思われます。
 尚、税制改正前においては、年収300万円と2000万円の人の可処分所得の差は、1250万円ほどであったものが、改正後では1100万円となり、150万円ほど可処分所得の差が縮まることになります。

(税理士 国枝宗徳)
10月 01 2010

税制改正 ~源泉所得税を中心にして~

Q.子供手当や高校の授業料無償化で、給与から控除される源泉所得税などが改正されたそうですが、どう変ったのですか?

A.この改正は所得税については平成23年分からですので、平成23年1月1日以降に支払われる給与から適用されます。
 主な改正点は扶養控除の見直しと、障害者控除の整理です。扶養控除とは、扶養している親族の人数などによって、所得から一定の金額を控除するものです。障害者控除とは、本人や扶養親族が障害者である場合に扶養控除とは別に所得から一定の金額を控除するものです。
 まず子供手当が創設されたことで、年齢16歳未満の扶養親族(以下年少扶養親族といいます。)に対する扶養控除がなくなります。また高校の授業料無償化の導入で、従来年齢16歳以上23歳未満の扶養親族一人につき63万円の扶養控除がありましたが、16歳以上19歳未満の人の25万円の上乗せ部分がなくなり、一人38万円となりました。19歳以上23歳未満の人は従来通り一人63万円の控除となります。それ以外の扶養親族は従来通り一人38万円の控除です。
 扶養控除が改正されたことと同時に障害者控除が改正され、三段階になります。控除額は一般の障害者は27万円、特別障害者は40万円、同居特別障害者は75万円となります。これらの金額がそれぞれ扶養控除とは別途控除されます。従来は扶養控除の一部であった同居特別障害者加算が障害者控除に統一され、これにより、扶養控除のない年少扶養親族についても、障害者控除は三段階で適用されることになります。

(税理士 村本秀夫)

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