5月 09 2011

中小企業会計の転換期

会計基準の国際化
 経済や企業の国際化が進展するなかで、国際的に会計基準(ルール)の統一化が急速に進んでいます。日本でも会計基準の国際財務報告基準(IFRS)への共通化を進める動きが加速化しており、2015年又は2016年の導入を目指しています。皆様も新聞記事や書店で積み上げられたIFRS解説書をよく目にされるのではないでしょうか。
それでは、中小企業にもIFRSが義務づけられるのでしょうか?--答えは「No」です。
 IFRSは、まず上場企業の連結財務諸表に義務化される見通しです。

中小企業における会計基準
 中小企業と上場企業といった大企業では背景が大きく異なります。中小企業は大企業と比較した場合、帳簿作成や決算・税務申告などの経理業務に費やす労力に限界があり、また厳密な会計ルールに対するニーズと受入能力の問題から、大企業が用いる会計ルールの適用が十分に浸透しているとはいえません。
 このような状況を踏まえて、2005年に日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、日本商工会議所、企業会計基準委員会の4団体は、「中小企業の会計に関する指針」を公表しました。この会計ルールは、会計情報の利用者が限られる中小企業に対して、大企業向けの会計ルールを簡素化したものです。
 しかしながら、この「指針」は大企業向けの会計ルールを簡素化したものですから、大企業向けの会計ルールがIFRSへの共通化を進めて変更されると、多少なりとも更新していかざるを得ないのです。

中小企業における会計基準の動向
 会計ルールの国際化の影響が進展する中で、中小企業の実態に即した会計のあり方について検討を行うことを目的として、2010年2月に中小企業庁が「中小企業の会計に関する研究会」、同年3月に企業会計基準委員会等の民間団体により「非上場会社の会計基準に関する懇談会」が設置され、非上場企業、特にその大部分を占める中小企業の会計に関する検討を行い、新たな会計指針・会計処理のあり方を示すものを取りまとめるべき等の方向性が示されました。    
 また今年2月には中小企業庁と金融庁が事務局を務める、「中小企業の会計に関する検討会」が設置されました。この検討会は、先の懇談会・研究会の報告書の内容を踏まえて、新たに中小企業の会計処理のあり方を示すもの、その普及方法、中小企業におけるその活用策等の具体的な内容について検討を行うために設置されたものです。
 その論点は、IFRSの影響を受けず、安定的なものとし、①「経営者に役立つ会計」、②「利害関係者と繋がる会計」、③「実務に配慮した会計」、④「実行可能な会計」といった中小企業の成長に役に立つものであるべきという点を重要としています。

中小企業会計の転換期
 中小企業の実態に即した新しい会計ルールは、今年の夏頃には取りまとめられるスケージュールとなっています。これからの中小企業はこの新しい「会計ルール」を経営発展のための判断ツールとして、積極的に導入し、企業の成長のため、大いに活用していただきたいと思います。

(税理士 花井洋一)
5月 09 2011

消費税 -「消費」に対する課税-

 先日、県立高校で租税教室の講師をしたときのことです。授業の最初に「この中で税金を支払ったことのある人?」と尋ねたところ教室の全員が手を挙げました。「何の税金を支払ったの?」と聞くと生徒たちは皆「消費税」と答えました。今の高校生が生まれるずっと前1989年4月にわが国は消費税を導入しました。彼らにとってはコンビニエンスストアや書店で買い物をすれば、5%(正確には国の消費税が4%、地方消費税が1%で合わせて5%ですね)を支払わなければならないことは当たり前のことであり、租税の中でも一番身近なものなのだと思いました。
 その名のとおり「消費」することに間接的に課税するという消費税は、比較的歴史の浅い税です。世界で最初に消費税を導入したのはフランスで1954年のことでした。その後EUの前身であるECでの租税統一運動をきっかけとして1970年以降ヨーロッパ諸国が続々と導入し、2008年には世界145カ国で導入されているとのことです。(札幌北間税会HPより)
[主な国の消費税率と国税収入に占める割合]

国税収入に占める割合47.1%23.7%27.5%23.7%20.0%

  フランス イギリス イタリア ドイツ 日本
消費税率 19.6% 20.0% 20.0% 19.0% 4%

宮内豊編『図説日本の税制 平成18年版』より
 高校生は自分で消費税を支払っていると思っていますが、実際に税務署に消費税を申告、納税するのは事業者の皆さんです。基準年度の課税売上高が1千万円を超えると、その翌々年から消費税の納税義務を負うことになります。消費税の納付税額の計算は次の二種類です。

  1. 原則課税
     課税売上に係る消費税から課税仕入に係る消費税を差し引いて計算します。消費税が課税されるのは事業として行う物品の売買や貸し付け、サービスの提供など「消費」に対する売上や仕入です。この対象とならないもの、例えば投資や貯蓄にかかわる利息や利益、人件費などについては消費税は不課税となりますし、社会通念上消費税がかかることがなじまないもの(社会保険医療の給付や介護保険サービスの提供など)は非課税となります。
  2. 簡易課税
     課税期間の前々年の課税売上高が5千万円以下の場合には業種を第1種(卸売業)第2種(小売業)第3種(製造業等)第4種(その他)第5種(サービス業等)の5種類に分け、実際の課税仕入の消費税額を計算することなく課税売上に対するそれぞれのみなし仕入率(90%~50%)を適用して消費税を計算することができます。
    しかし、複数の業種を営む場合(第2種である小売業の方が、第3種である農業を兼業しているときなど)では、それぞれの事業の課税売上高の割合に応じて計算することになりますし、たとえ1種類の事業しか行っていない場合でも、年によっては事業用の新車を購入するために今乗っている車を下取りに出した場合、その下取金額が第4種の売上となり、自分の意図しないところで複数の業種に係ってしまうこともあります。
     課税期間の前々年の課税売上高が5千万円以下の方ならば、①と②のどちらか有利な方法を選択することができます。消費税の課税事業者となるときには、どちらがいいのか一度それぞれの方法で消費税を計算されることをお勧めします。(前もって選択届出が必要です。)

 いずれにしても消費税の計算は煩雑で手間がかかることが多いものです。もし何かご不明な点などありましたら、お気軽にお近くの税理士にご相談ください。

(税理士 坂井弥生)
5月 09 2011

平成23年度税制改正大綱 ―所得税―

給与所得控除について大幅改正 ―オーナー会社課税再来か―

 民主党政府は、平成22年12月16日に開催された臨時閣議で「平成23年度税制改正大綱」を閣議決定し、その税制改正大綱を公表しました。民主党政権になってから2回目のとりまとめとなったこの税制改正大綱においては、高額給与所得者及び法人企業経営者に影響のある給与所得控除等ついて、大幅な改正が盛り込まれています。

 平成23年度税制改正の基本的な考え方は、税制改正による税収の回復はもとより、デフレ脱却と雇用のための経済活性化、格差拡大とその固定化の是正等を行うことを主なもとしています。そのため、税制抜本改革に向けた基本的方向性や政府の財政運営方針との整合性を確保しつつ、所得課税、資産課税、消費課税全般にわたる改正を行うこととされています。
 したがって、所得税については、格差社会に対応するためにも、税率構造の見直しはもとより、高額所得者に対して結果的に有利になっている所得控除の見直しなどによる課税ベースの拡大等を進めていくものとされています。具体的には、①給与所得控除の上限設定と、②役員給与等に係る給与所得控除の見直しが、今回の税制改正に盛り込まれました。

①給与所得控除の上限設定
 給与所得者に対しては、その概算経費として主に解釈されている給与所得控除が設けられています。現在の給与所得控除は、給与収入に応じて逓増的に控除が増加していく仕組みとなっており、その控除額は無制限となっています。しかしながら、給与所得者の必要経費が収入の増加に応じて必ずしも増加するとは考えられない等の理由から、今回の税制改正大綱では、給与収入が1,500万円を超える場合の給与所得控除額を245万円の上限を設けることとされています。

②役員給与等に係る給与所得控除の見直し
 法人役員については、一般従業員に比べ、勤務態様が必ずしも従属的でないと考えられることや、給与額の自己決定度合いが高いこと、さらには、高額な役員給与について、給与所得控除の性格のうち「他の所得との負担調整」部分が過大となっていることがあげられました。
 このような理由から、今回の税制改正大綱では、役員給与に係る給与所得控除を見直し、4,000万円超という特別に高額な役員給与については、給与所得控除額の2分の1の額を上限としています。また、2,000万円を超え4,000万円までの間では、「他の所得との負担調整」部分の一部を認め、控除額の上限を4分の3とする部分も含め、調整的に徐々に控除額を縮減するとされています。なお、この給与所得控除の縮減措置は、役員給与のほか、指定職等の国家公務員等やそれと同様の職位の地方公務員等の給与にも適用するとされています。
 このように平成23年度税制改正において、高額給与所得者に係る給与所得控除額に上限を設けたことは、実態に即した「概算経費」に近づけるという趣旨から評価できると言ってもよいでしょう。しかし、「他の所得との負担調整」部分が不要であるから、役員給与に係る給与所得控除額を半減とすることは理由になっておらず、根拠が明確でないということから、再検討が必要であると言えるのではないでしょうか。
 
 再検討に当たっては、中小企業の法人役員は事業上の債務保証等いくつものリスクを背負っており、経営危機等により役員の個人財産を会社に投じるようなケースもあることに留意する必要があるのではないでしょうか。さらに言えば、平成22年度税制改正により、法人税の「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入」が廃止されましたが、この規定の効果を所得税という側面から再来させようとしているのではという声もあることを考慮に入れて欲しいところです。

(税理士 伊藤初彦)
5月 02 2011

所得税の青色申告について

Q1:青色申告とはどのような制度ですか。
A1:所得税の申告をする際に、複式簿記に基づいて帳簿を作成し、その帳簿から正しい所得を計算して申告することを「青色申告」と言います。
Q2:青色申告をすると、納税者にとってどのような有利なことがありますか。
A2:個人事業者の所得税では、1~4のような青色申告の特典が用意されています。

  1. 青色申告特別控除
    複式簿記に基づいて帳簿を作成している個人事業者は、事業所得・不動産所得から65万円、簡易な簿記による記帳を行っている個人事業者は10万円が控除されます。
  2. 少額減価償却資産の特例
    機械・車両・備品などの減価償却資産で30万円未満のものを購入した場合は、一度に必要経費に算入することができます。ただし年間300万円を限度とします。
  3. 青色事業専従者給与
    届出をすれば家族に支払う給与が必要経費として認められます。
  4. 純損失の繰越控除
    赤字(純損失)が出た場合には、その赤字を翌年以降3年間繰り越して黒字と相殺することができます。

Q3:青色申告をするためにはどのような手続きが必要ですか。
A3:税務署長に青色申告の承認申請書を提出します。承認を受けた個人事業者は、帳簿書類を備え付け、正しく記帳する義務を負います。もしそれらが守られていない場合には、青色申告の承認が取り消される場合があります。

(税理士 宮脇治嘉)

WordPress Themes