3月 06 2012

消費税の課税対象

Q.私は食料品の小売りをしています(消費税の課税事業者です)。
この度、事業に使っていない自宅を売却しました。この売却価格も消費税計算上考慮すべきでしょうか?
A.消費税は「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等」について消費税の課税対象になります。自宅の売却は事業として行っていませんので消費税の計算上考慮しません。
(課税対象は他に「外国貨物の輸入」がありますが、今回は説明を省きます)

Q.では、その「事業者が事業として行う取引」とはどのようなものですか?
A.「事業者」とは、個人事業者(事業を行う個人)と法人をいいます。
「事業として」とは、対価を得て行われる資産の譲渡等を繰り返し、継続、かつ、独立して行うことをいいます。
したがって、個人の中古車販売業者が行う中古車の売買は事業として行う売買になりますが、サラリーマンがたまたま自分の自家用車を手放す行為などは、事業として行う売買とはなりません。
なお、法人は事業を行う目的をもって設立されたものですから、その活動はすべて事業となります。

Q.「対価を得て行う取引」とはどのようなものですか?
A.「対価を得て行う」とは、物品の販売などをして反対給付を受けることをいいます。
すなわち反対給付として対価を受け取る取引をいいます。
したがって、寄附金や補助金などは、一般的には対価性がありませんので、課税の対象とはなりません。また、無償の取引や宝くじの賞金なども原則として課税の対象になりません。

Q.「資産の譲渡等」とは何ですか?
A.消費税法上、「資産の譲渡等」とは、事業として有償で行われる商品や製品などの販売、資産の貸付け及びサービスの提供をいいます。

(税理士:長瀬徹)
3月 05 2012

「帳簿書類の保存に不備があると・・・」

1.はじめに

 帳簿書類の整理や保存は、面倒ですし場所をとりますので、ついついなおざりになってしまいがちですが、どういう問題が生じるおそれがあるか、消費税を中心に解説いたします。

2.消費税と帳簿等の保存

 消費税は、大雑把に申しますと、お客様からお預かりした消費税から、仕入れ先に支払った消費税を差し引いて計算するしくみです。
 仕入れ先に支払った消費税を差し引くことを「仕入税額控除」といいますが、帳簿・請求書の保存がない場合には、この「仕入税額控除」ができません(消費税法30条7項)。
 たとえば、税込の売上げが105万円、税込の仕入れが84万円としますと、通常の場合は5万円から4万円を差し引いた1万円が税額となるのですが、仕入れに関する帳簿・請求書の保存が全くない場合は、4万円の仕入税額控除が認められず、税額5万円となります。

3.最高裁判所の判断

 消費税の仕入税額控除に関する帳簿・請求書の保存について、最高裁は次のように判断しています。
 「税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要する」
 最高裁は、納税者が税務職員に対して格別理由がないのに帳簿等の提示を拒み続けたという場合は、仮に帳簿等の保管がされていたとしても「保存」はなかったと判断しています。したがって、税務調査に支障が生じるような帳簿書類の不備がある場合には、その程度によっては全部又は一部の「保存」が認められないケースがありうると考えられます。

 ちなみに、この場合は、法人税の青色申告についても、その取消しが認められると判断しています。

 なお、この「保存」は後出し不可であり、あくまで税務調査の際に「適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存すること」が求められています。

4.推計課税等

 法人税や所得税は、所得(税務上の「もうけ」)を計算して、それに税率を乗じて計算する仕組みです。しかし、帳簿書類が不備であるなどの理由で所得が確認できない場合は、従業員数などの間接的な情報により推計されることがあります。これを推計課税といいます。
 3.のような帳簿書類の不備があった場合、まず法人税について、青色申告が取り消され、青色申告が取り消されることにより推計課税ができるようになりますので(法人税法131条)、法人税の推計課税が行なわれ、さらに消費税の推計課税が行なわれる、というおそれがあります。
 そしてこの場合は、上述のとおり、保存が認められない全部又は一部の仕入れについて、仕入税額控除の適用がありません。
 さらに、当初申告より税額が増えることになりますので、過少申告加算税や延滞税も別途課されます。隠ぺいや仮装があると、重加算税や刑罰の対象にもなります。

5.おわりに

 消費税は、付加価値税といわれることもありますとおり、「付加価値」に対して課される税であり、売上税ではないため、仕入れについても推計するのが妥当ではないか、という批判や、そもそも消費税は推計課税が法定されていない(所得税法や法人税法には推計課税に関する規定があります。)という批判が考えられますが、いまのところは上記のような取扱いがなされております。
 なお、税務職員が税務調査を行う権限のことを質問・検査権というのですが、これには一定の範囲があります。また、帳簿等の保存には一定のルールが定められております。詳しくは、税理士にご相談ください。

(税理士:佐藤大祐)
3月 05 2012

平成24年度税制改正のポイント

給与所得者に対する課税が見直されます!

平成24年度税制改正大綱によると、個人所得課税における主要改正点の1つに、「給与所得控除の見直し」があります。今回は、「給与所得控除の見直し」について解説します。
給与所得控除の見直し

1.給与所得控除の上限設定

①給与所得控除とは
給与所得控除とは、給与所得者の所得税や住民税を計算するときに、『給与収入から差し引ける分』をいいます。自営業者の場合は、商品の売上金額から仕入原 価や販売経費などの、必要経費を差し引くことができます。給与所得者の場合は、この必要経費の代わりに、給与所得控除が認められているわけです。給与所得 は、「給与収入-給与所得控除」という算式で求められます。
表1は、現行の給与所得控除額を簡易に求める表です。
(※表1)

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%,ただし65万円に満たない場合には65万円
180万円超  360万円以下 収入金額×30%+18万円
360万円超  660万円以下 収入金額×20%+54万円
660万円超 1,000万円以下 収入金額×10%+120万円
1,000万円超 収入金額× 5%+170万円

たとえば、給与収入が500万円の給与所得者は、給与所得控除額は154万円であり、給与所得を求めると500万円-154万円=346万円ということになります。
これが、年収2000万円の給与所得者となりますと、給与所得控除額は270万円となり、その給与所得を求めると2000万円-270万円=1730万円となります。
上記表によりますと、収入が増加するにつれて給与所得控除も常に増えていくことになっていますが、改正法はこれに上限を設けようとするものです
②今回の改正内容
今回の改正によって、給与所得控除額は一律245万円が上限とされました。この改正の影響を受けるのは、年間の給与収入が1500万円超の納税者で、税負担は増加します。

2.特定支出控除の見直し

 給与所得者が下記イ~ホの支出をした場合、その年中の特定支出の額の合計額が給与所得控除額を超えるときは、確定申告によりその超える金額を給与所得控除後の金額から差し引くことができる制度(現行制度)があります。
イ 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出
ロ 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出のうち一定のもの
ハ 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出
ニ 職務に直接必要な資格(一定の資格を除きます。)を取得するための支出
ホ 単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出のうち一定のもの
 これを給与所得者の特定支出控除といいます。改正点は、次の通りです。
①特定支出の範囲の拡大
特定支出の範囲に次に掲げる支出が追加されます。
イ 職務の遂行に直接必要な弁護士、公認会計士、税理士、弁理士などの資格取得費
ロ 職務と関連のある図書の購入費、職場で着用する衣服の衣服費及び職務に通常必要な交際費(勤務必要経費)*ロは、65万円が限度となります。
②特定支出控除の適用判定・計算方法の見直し
その年の特定支出の額の合計額が、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額を超える場合(現行:給与所得控除額を超える場合)は、その超える部分の金額を給与所得控除額に加算できることになります。
イ その年中の給与等の収入金額が1,500万円以下の場合 その年中の給与所得控除額の2分の1に相当する金額
ロ その年中の給与等の収入金額が1,500万円を超える場合 125万円

3.適用関係

上記の改正は、平成25年分以降の所得税及び平成26年度分以降の個人住民税について適用されます。

(税理士:国枝宗徳)
3月 05 2012

「税制改正に関する建議」について

「社会保障と税の一体改革」に関する議論が活発に行われています。消費税の増税ばかりに注目が集まっていますが、すでに昨年来、年少扶養控除の廃止や子ども手当の減額、復興増税に伴う所得税・住民税の引き上げ等が決まっており、これに新たに消費税の増税が加われば、国民への税負担は一段と増し、個人の生活に大きな影響を及ぼすこととなります。
こういった税制改正の動きに対し、税理士としての意見や考えを問われることがよくあります。そこでここでは、税理士会が毎年行っている「税制改正に関する建議」についてご紹介したいと思います。
建議とは、一般的に役所に意見を申し立てることを意味します。税理士法第49条の11には、「税理士会は、税務行政その他租税又は税理士に関する制度について、権限のある官公署に建議し、 又はその諮問に答申することができる。」と定めらており、この規定に基づいて税理士会では、財務省、国税庁、総務省、政府税制調査会等に「税制改正の建議」を行っています。
「平成24年度・税制改正に関する建議書」では、税務に関する専門家として納税者の立場に立って、税制のあるべき姿を、次の5つの基本的視点から表明しています。
(1) 公平な税負担
公平な税負担は、税制を考える上で最も基本的な視点であり、納税者が負担能力に応じて分かち合うという意味である。また、公平には、水平的公平、垂直的公平とともに世代間の公平の問題があり、それらが相互に補完し合うバランスのとれた税制を構築していく必要がある。
(2) 理解と納得のできる税制
わが国の国税のほとんどは申告納税方式によって税が確定し、賦課課税方式による個人住民税なども所得税の確定申告を基礎としている。申告納税制度の下では、納税者自らが課税標準及び税額を計算し申告を行うので、租税制度は納税者が理解できるものであり、また、その目的や内容についても納得できるものである必要がある。
(3) 必要最小限の事務負担
租税収入に係る費用は、税務行政庁側の費用だけでなく納税者側の事務費用も併せて認識されるべきであり、過度の負担を納税者に強いることは避けなければならない。
(4) 時代に適合する税制
税制には、納税者の経済活動における選択を極力歪めないよう中立であることが求められるが、一方では財政や経済とも密接な関係を有している。経済社会の構造変化に応じて税制が適切に対応していかなければ、新たな不公平が生じるなどの弊害を招くことになる。したがって、税制を常に時代に適合するものとすべく、その見直しを継続しなければならない。
(5) 透明な税務行政
透明な税務行政は、公平な税負担の確保と申告納税制度を維持発展させるためには必要不可欠であり、納税者から更なる信頼を得るための施策を行っていく努力が求められる。
この5つの基本的視点の下、同建議書では、所得区分の見直しや、交際費課税に関する要望など30項目の税制改正建議のほか、「確定決算基準の維持」、「消費税の改正」、「国税・地方税の申告納税の一元化」の3項目に対する基本的な考え方や問題意識を表明しています。
こういった税理士会が毎年行う建議が契機となり、最近では、特殊支配同族会社の役員給与損金不算入制度の廃止(平成22年度)、同族会社の留保金課税制度の廃止(平成18年度)などが実現されています。
税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることが税理士の使命であり、税理士会の意見表明は、まさに税理士の使命に基づく税理士会の義務なのです。税理士会は納税者に一番近い税務の実務家として、今後も税制の適正化に向けて積極的に提言していきます。

(税理士:加賀元浩)

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