5月 09 2017

全員参加型社会へ 配偶者控除・配偶者特別控除の見直し

Q.所得税における配偶者控除・配偶者特別控除の見直しが行われるようですが、その背景を教えてください。

 

A.現在の日本の経済は、個人消費や設備投資に力強さを欠いている状況にあり、その背景には「人口減少」、「少子高齢化」の問題があると言われています。

そのため、政府は子育てや介護への不安をなくし、女性や若者が働きやすくすることにより、少子高齢化の流れに歯止めをかけ、誰もが生きがいを感じられる社会の実現に向けて取り組んでいます。全ての人が挑戦の機会を得て活躍できる全員参加型の社会を目指しています。

そして、税制度においては、第一弾として配偶者等控除を受けるために、就業調整を意識しなくても済む仕組みを構築する観点から、配偶者控除・配偶者特別控除の見直しが行われたものです。

 

Q.では、その内容を教えてください。

 

A.まず、配偶者控除・配偶者特別控除とも所得金額によって金額が異なります。

例えば、夫及び妻とも給与所得だけがある場合で、夫が妻を控除対象配偶者として配偶者控除又は配偶者特別控除を受ける場合の控除額は、次表の通りとなります。

 

本人の収入金額 配偶者控除  配偶者特別控除
配偶者の収入が103万円以下 150万円以下 155万円以下 160万円以下 167万円以下 175万円以下 183万円以下 190万円以下 197万円以下 201万円以下 201万円超える
①1120万まで 38 38 36 31 26 21 16 11 6 3
②1120万円を超え1170万円まで 26 26 24 21 18 14 11 8 4 2
③1170万円を超え1220万円まで 13 13 12 11 9 7 6  4 2 1
④1220万円超える

(単位:万円)

(注)配偶者が70歳以上の場合(老人配偶者控除)は、控除額は①は48万円、②は32万円、③は16万円、④は適用なし。

 

なお、配偶者控除・配偶者特別控除については、所得金額が1000万円を超える場合(前記の例では、夫の収入金額にして1220万円を超える場合)には、適用されません。

また、いずれも平成30年分以後の所得税について適用されます。

 

【名古屋税理士会高山支部・佐藤 昇】

5月 04 2017

もし災害に見舞われたら、税務の取扱いはどうなるの?

2011年3月に発生した東日本大震災や2016年4月に発生した熊本地震では甚大な被害が発生し、復興にはまだ多くの時間を要しそうです。わが国ではこれ以外にも過去大きな震災があり、多くの方々が犠牲となってきました。天災は避けられるものではありませんが、万が一の事を想定して、食料を備蓄したり、避難先を決めておく等の準備をされている方も少なくないことと思います。そこで今回は災害が起きた際に必要と思われる税務を取り上げることにより、知識の準備に役立てていただきたいと思います。

 

○固定資産が被害を受けた場合(法人税・所得税)

災害を受けた固定資産に対して、現状を回復するための費用や被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水又は土砂崩れの防止等のために支出する費用について修繕費処理しているときは、この処理が認められます。また商品や事務所等が滅失、損壊した場合はその損失額が損金の額(事業経費)に算入されます。加えて損壊した資産や土砂等の障害物除去のための費用も同様の取り扱いとなります。

 

○従業員に対して(法人税・所得税)

災害により被害を受けた従業員等又はその親族等に対して一定の基準に従って支給する災害見舞金は福利厚生費として損金の額(事業経費)に算入されます。また自己の従業員と同様の事情にある専属下請先の従業員等又はその親族等に対しても同様に扱われます。ここでいう一定の基準には、被災した程度に応じて支払われる等の合理的な基準が必要となります。また社会通念上相当であることも条件となります。従業員等の中には退職者や採用内定者を含むものとされています。

一方このような災害見舞金を受け取った側も、その金額が心身または資産に加えられた損害につき支払いを受けるような見舞金だった場合については所得税が課されないこととなっています。

 

○取引先に対して(法人税)

法人が、取引先に対して、被災前の取引関係の維持・回復を目的として行った災害見舞金の支出、事業用資産の供与に要した費用は交際費に該当せず損金の額に算入できます。この際取引先から領収書などを受け取れない場合は支出先の所在地、名称、支出年月日を記録しておく必要があります。ただし、取引先の役員等に見舞金を支払う場合は、付き合い等の性質を有していると判断され、交際費に該当する場合がありますので注意が必要です。

復興の過程において、その復旧の支援を目的として災害発生後相当の期間に売掛金等の債権を免除する場合は、その損失は寄付金又は交際費以外の費用として処理することが認められます。期間としては仮店舗で営業している等、通常の営業活動を再開する前までと考えておいたほうがよいでしょう。

 

○被災地に対して

震災関連の特例ではありませんが、被災地に対してふるさと納税の制度を利用して寄付をすれば、復興を支援する気持ちを表しやすいと思います。5自治体以内の場合はワンストップ特例を利用することができ、その他の申告が必要ない場合、確定申告は不要となりますので手続きとしても簡単だと思います。また、被災地支援の一環として、被災地とは異なる自治体が寄付を代理受領するという場合もありますので知っておかれるとよいと思います。

 

備えあれば憂いなしといいますが、実際に震災が起きれば、このようなことを調べている心の余裕もないと思います。制度が存在するということを記憶の片隅にでも覚えていただければ役に立つこともありますから、是非お役立ていただきたいと思います。

 

【税理士 土屋広高】

 

5月 04 2017

Q&A 医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)について

今年の1月からセルフメディケーション税制が始まっています。既に対象の領収書が手元にある方も多いのではないでしょうか。支払額が1万2千円を超えると特例の対象になりますが、年内に行うべき事もあります。以下で確認をしていきましょう。

 Q:スイッチOTC薬って何ですか?

A:厚生労働省が定めた83の成分が含まれる薬品です。これがセルフメディケーション税制の対象となります。

 

 Q:健康診断や予防接種が必要ですか?

A:この税制が利用できる人は、健康の保持や病気の予防のために「一定の取組」をしている居住者、となっています。「一定の取組」とは、保険組合や市町村が実施する健康診査、予防接種、勤務先での健康診断、等が該当します。予防接種の領収書や健康診断の結果通知表などのコピーが必要です。

 

 Q:自分の家族にも健康診断などを受けさせる必要がありますか?

A:こちらは国税庁のHPなどにも回答があります。生計を一にする配偶者やその他親族が「一定の取組」をする必要はない、となっています。

 

 Q:年が明けてから、健康診断等を受けていない事に気が付いた、今からでも間に合いますか?

A:この税制の特例は受ける年分に「一定の取組」をする必要があります。年が明けてからでは間に合いません。ただし、その領収書がセルフメディケーション税制ではなく、医療費控除で使える可能性もあります。あわせてご確認ください。

 

 Q:以前からある医療費控除と両方同時に使えますか?

A:毎年の確定申告で医療費控除をされている方も多いと思います。セルフメディケーション税制と医療費控除とは、どちらかを選択するものとなっています。どちらにも該当する場合は、有利な方を選択して申告する事ができます。

 

【税理士 水野貴文】

5月 04 2017

税に関する知識を高めてみませんか ―租税教育―

あなたは「現在の社会」をどう思っていますか?

あなたは「社会のあり方」を考えたことがありますか?

あなたは「社会の構成員」として何ができますか?

日本国憲法は三大義務を規定していますが、その一つ「納税の義務」を受けて我が国では、自らの計算によって租税債務を確定し、自らの納税によりその債務を履行する、「申告納税制度」を租税の基本に置いています。

この申告納税制度を支えるのは、私たち国民が、租税に関する意義、役割、機能、仕組み等の租税制度を正しく理解し、「社会のあり方」を主体的に考えることにあり、申告納税制度を維持発展させることは、納税に対する納得感の醸成と民主国家の維持発展に寄与します。

租税制度を知ることは、日本という国家を知ることと同じ意味をもちます。「税は国家なり」という言葉とともに「法律なくして課税なし」という法治国家の成立を意味し、主権在民の重要性が税には存在しています。

租税教育は、まさしくその一端を果たすことのできる重要な役割をもち、国の根幹をなすものです。租税教育の目的は、「社会の構成員」として正しい判断能力と健全な納税者意識をもつ国民を育成することです。

このことは教育基本法の教育の目的である「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民を育成する」ということにも合致し、租税教育は、教育の理念にそった国民の育成を図るうえで必要であるということになります。

税理士会では、このような租税教育の重要性を鑑み、「租税教育の在り方」を研究しその充実を図り、租税教育関係団体等との連携により効果的な租税教育を推進しています。

私たち税理士は「税務に関する専門家」であり、租税教育を行う「適任者」であり、「独立した公正な立場」において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼に応え、「租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図る」ことを使命としており、租税教育の推進に努める社会公共的使命を担っています。

「平成23年度税制改正大綱」に納税環境整備の一環として官民協力して租税教育の充実を図ることが盛り込まれたことを契機に、「租税教育推進関係省庁等協議会」が設立され、税理士会では、平成23年に「租税教育基本新指針」を制定、平成26年には税理士法が改正され、会則において「租税教育は税理士会が行う事業」と規定されました。

名古屋税理士会では、平成15年に租税教育を「重点施策」に掲げ、取組んできたところでありますが、平成25年に租税教育事業を広報部から独立させ「租税教育推進委員会」を設置、平成27年には組織を「租税教育推進部」に改組、更に平成28年には「租税教育講義用テキスト」を作成、租税教育講師の質的向上や講義内容の均一性を図りながら、租税教育を積極的に推進しています。

租税教育の重要性が一層高まる中、税理士の果たすべき役割も益々重要度を増している今日ですが、本来、租税教育は、「社会全体で取り組むべき」ものです。まずは国民が租税に感心をもち、租税制度を正しく理解し、政治に関心をもち、税の使われ方を監視し、租税教育を通じて「豊かで安心して暮らせる社会」について考えていきましょう。

 

【税理士 西川幸一郎】

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