3月 06 2014

消費税の軽減税率制度の問題点

消費税10%時の軽減税率制度導入

 平成26年度税制改正大綱において、消費税10%の税率の時に、軽減税率制度を導入することが明記されました。しかし、無条件に軽減税率制度の導入を行うのではなく、その条件として、(1)「社会保障と税の一体改革」の原点に立って必要な財源を確保すること(2)関係事業者を含む国民の理解を得ることの2点があげられています。

軽減税率制度の導入理由

 そもそも、軽減税率制度を導入する根拠は、何でしょうか。これは、「消費税の逆進性」を緩和するための措置であると言えます。「消費税の逆進性」というのは、消費に対して比例的に課税する消費税では、所得が高い人ほど消費税の負担が重くなるものの、所得に占める消費の割合が高所得者ほど低くなるために、所得に対する税負担率は、所得が高くなるにしたがって低下してしまうという現象をいいます。
 この消費税の逆進性を緩和する手段として、生活必需品などの一部の品目に対して軽減税率を導入するということであります。しかし、軽減税率には次のような問題があり、消費税は、「単一税率」を維持し、「消費税の逆進性」対策は、別の方法を採るのが望ましいと名古屋税理士会は考えています。

軽減税率制度の問題点

  1. 何を軽減税率の対象とするか決定することの難しさ
    人々の生活様式や価値観の多様化によって、逆進性緩和のための軽減税率の適用範囲を合理的に決定していくことは極めて困難になっています。すでに消費税導入の先輩である欧州諸国では、軽減税率制度があるのは、当然であるように思われています。  しかし、軽減税率制度を導入したために、消費税=(欧州における付加価値税)は、税務当局にとっても、最も手間ひまのかかる税目となっているようです。
  2. 軽減税率の恩典は、富裕層にも及ぶ
    軽減税率の恩典は、軽減税率が適用される財・サービスの絶対消費額は、低所得者層よりも富裕層の方が大きいので、生活必需品への軽減税率の適用は、低所得者層も恩恵を受けるが、富裕層の方がより一層恩恵を受けることになることも考えられます。
  3. 軽減税率に伴う事業者の事務負担の増加
    消費税は、消費者が税金を負担する仕組みを採っていますが、納税および税額の計算については、事業者が行うことになっています。軽減税率が導入されれば、消費税の税額を計算するのが大変煩雑になり、その事務負担は、事業者が負うことになります。
  4. 軽減税率導入が、消費税率高騰を招く
    軽減税率を導入すると、その分だけ消費税の税収が減ることになってしまいます。そこで、これを補うために、標準的な消費税率をさらに上げねばならないという事態となってしまいます。

おわりに

 税率8%時には、逆進性緩和手段として、「簡易な給付」が実施されることになっています。この給付制度をより発展させた制度として、マイナンバー制度を前提とした「給付付き税額控除」という制度もあります。この制度は、すでにカナダ、ニュージーランドにて導入されており、上記問題点を合理的に解決してくれる制度なのです。なにも欧州で一般的となっている制度をまねる必要はなく、「日本の消費税率は、単一税率で」を貫徹することこそ、消費税が未来の安定財源となる基礎を築くことになるのです。

(税理士 国枝宗徳)

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