8月 03 2017

税理士の国際交流と他国制度比較

1.税制の他国比較を行う意義

名古屋税理士会はドイツのミュンヘン税理士会と友好協定を結び交流を続けています。この交流では4年毎に双方を訪問し、租税制度や税理士制度に関して意見交換や講演を行っています。租税制度などを他国と比較をすると、日本では当然と思っていた事項が他国ではそうなっていないことがあります。その理由を考えることで租税に対する理解が深まりますので、他国との交流や制度比較は有意義です。

以下、この交流で意見交換したドイツと日本との税制の違いの中で主なものを紹介します。普段日本で当然と思っていることについて、改めて考えさせられる機会になるものと思います。なお、ドイツは連邦のため州による税法の違いがありますが、以下ではミュンヘン税理士会が所在するバイエルン自由州の税制度を紹介します。

 

2.日本とドイツの税制等の具体的な相違点

(1)申告方法と所得概念

日本では所得税、法人税は納税者自身が税額計算を自ら行う申告納税制度ですが、ドイツは課税当局が税額を確定する賦課課税制度です。申告納税制度では税額まで納税者が計算し申告しますが、賦課課税制度では税金計算の基礎となる課税標準は納税者が課税当局に提供するものの、税金計算自体は課税当局によって行われます。税金計算を誤った場合の責任が日本のほうが重いといえるでしょう。

 

(2)所得概念

税金計算の基礎となる所得の概念自体も国によって異なります。日本は新たに得た経済的利得全てを所得と考えます(包括的所得概念)。しかし、ドイツでは反復継続的に発生しない経済的利得の中には所得に含まれないものがあります(制限的所得概念)。所得の範囲が国の実状により異なることを知らされます。

 

(3)課税単位

課税単位とは、課税対象となる所得を個人ごとに捉えるか、世帯全体で捉えるかということですが、日本の所得税の課税単位は個人単位のみです。これに対してドイツでは個人単位課税と夫婦単位課税の選択制で、納税者にとって有利なほうを選択できます。なお、課税単位の考え方には上記以外に家族単位で考えることもあります。

 

 

(4)法人税の対象

日本では法人の所得に対して課される税金は法人の規模の大小を問わず法人税ですが、ドイツの場合、法人の種類が人的会社と資本会社に分類され、人的会社(合名会社など)に対する課税はその会社ではなく、その会社の持分を持つ個人に課税され、税目も所得税になります(パススルー課税)。このためドイツでは歳入に占める法人税の割合が低くなっております。日本でも中小企業に対する税制として、パススルー課税の導入について検討してもよいのではないでしょうか。

 

(5)納税者番号制度

日本では平成28年1月からのマイナンバー導入で、本格的な納税者番号制度が開始されたといえますが、ドイツは日本に先行して番号制度を開始しております。ただし、ドイツでの番号制度の利用範囲は税分野に限られております。日本のように社会保障制度の分野に番号制が採用される予定は現在のところないようです。ドイツで番号制度の対象を限定しているのは、プライバシーに対する配慮が影響しているようです。

 

以上のように税制をドイツと比較してきましたが、他国との違いを理解することで、日本の税制の考え方を理解する一助になればと思います。

 

 

【税理士 大島幸一】

 

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