11月 02 2017

相続税等における取引相場のない株式の評価について

中小企業の株式は、譲渡制限株式(会社法第2条17項)として発行されるのが通常です。上場企業のように株式が広く流通することはなく、交換可能な金銭的価値を客観的に把握することは容易ではありません。そこで、課税の公平を実現する観点から、財産評価基本通達では、相続税等における取引相場のない株式について、次のように定めています。

 

1.「取引相場のない株式」とは

上場株式及び気配相場のある株式を定義し、それ以外を「取引相場のない株式」と定めています。

 

2.「原則的評価方式」と同族株主以外の株主に適用される「特例的な評価方式」

取引相場のない株式は、原則的な評価方式を定め、同族株主に適用しています。一方で、支配権のない少数株主にまで同様の株価で評価することは適切でないことから、同族株主以外の株主は「特例的な評価方式」によって株価を計算することとなります。

 

3.「原則的評価方式」「特例的な評価方式」の具体的な評価方法

「取引相場のない株式」を発行している非上場会社といっても、上場企業に匹敵するような大企業から、極めて零細な企業まで様々です。これらを一律に扱うのでは、平等とは言い難いため、「原則的な評価方式」では、「業種」「従業員数」「総資産価額」「年間取引金額」によって、会社規模ごとに「大会社」「中会社」「小会社」に区分します。具体的な評価方法には、「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」があります。「類似業種比準方式」とは、取引相場のない評価会社の事業内容が類似する業種目に属する複数の上場会社の株価の平均値に、評価会社及び類似業種の1株当たりの「配当金額」「年利益金額」「簿価純資産価額」の比準割合を乗じて計算する方法です。また、「純資産価額方式」とは、評価会社の課税時期現在における資産を財産評価基本通達の定めによって評価した価額(相続税評価額)に評価替えするなどして1株当たりの評価額を計算する方法です。評価会社の規模区分が大きいほど、上場会社の株式の評価とのバランスを考慮して評価額を決定すべきであることから、評価額を計算する上で、類似業種比準方式を用いる割合が大きくなります。

「特例的な評価方式」では、配当還元方式が採用されています。これは、過去の配当実績を一定の還元率(10%)で割り戻して株価を簡便的に算出する評価方式です。経営に関与する度合いが低い少数株主にとっての株式の価値はもっぱら配当にあると考えられ、また、この計算方式によって、原則的評価方式と比較して安い株価が算定されるのが通常です。

 

4.「類似業種比準方式」の計算方法の税制改正

税制改正により、平成29年1月1日以降の相続から、「類似業種比準方式」の見直しが行われました。比較対象となる上場会社の株価が上昇している一方で、中小企業には業績に大きく影響のない企業も多いと言われます。中小企業の株価が想定以上に高く評価されることにより、円滑な事業承継に影響をきたす可能性があることから、これを是正する趣旨の改正です。このほかにも、会社規模区分の判定に係る金額基準等の見直しも盛り込まれています。

 

5.まとめと税制改正の有利不利

取引相場のない株式の評価は、会社規模や保有する株主が同族株主か否かによって、大きく評価方式が異なります。税制改正によって、純資産が多いが、利益金額が小さい会社は株価が上昇する要因となります。また、相続税法、所得税法、法人税法によっても評価の考え方が違う場合があります。株価が現時点でいくらとなるかは、中小企業経営者にとって重要な項目ですから、顧問の税理士に株価の算定を依頼し、直近の株価を把握しておきましょう。

 

税理士 三浦陽平

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