3月 05 2012

「帳簿書類の保存に不備があると・・・」

1.はじめに

 帳簿書類の整理や保存は、面倒ですし場所をとりますので、ついついなおざりになってしまいがちですが、どういう問題が生じるおそれがあるか、消費税を中心に解説いたします。

2.消費税と帳簿等の保存

 消費税は、大雑把に申しますと、お客様からお預かりした消費税から、仕入れ先に支払った消費税を差し引いて計算するしくみです。
 仕入れ先に支払った消費税を差し引くことを「仕入税額控除」といいますが、帳簿・請求書の保存がない場合には、この「仕入税額控除」ができません(消費税法30条7項)。
 たとえば、税込の売上げが105万円、税込の仕入れが84万円としますと、通常の場合は5万円から4万円を差し引いた1万円が税額となるのですが、仕入れに関する帳簿・請求書の保存が全くない場合は、4万円の仕入税額控除が認められず、税額5万円となります。

3.最高裁判所の判断

 消費税の仕入税額控除に関する帳簿・請求書の保存について、最高裁は次のように判断しています。
 「税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要する」
 最高裁は、納税者が税務職員に対して格別理由がないのに帳簿等の提示を拒み続けたという場合は、仮に帳簿等の保管がされていたとしても「保存」はなかったと判断しています。したがって、税務調査に支障が生じるような帳簿書類の不備がある場合には、その程度によっては全部又は一部の「保存」が認められないケースがありうると考えられます。

 ちなみに、この場合は、法人税の青色申告についても、その取消しが認められると判断しています。

 なお、この「保存」は後出し不可であり、あくまで税務調査の際に「適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存すること」が求められています。

4.推計課税等

 法人税や所得税は、所得(税務上の「もうけ」)を計算して、それに税率を乗じて計算する仕組みです。しかし、帳簿書類が不備であるなどの理由で所得が確認できない場合は、従業員数などの間接的な情報により推計されることがあります。これを推計課税といいます。
 3.のような帳簿書類の不備があった場合、まず法人税について、青色申告が取り消され、青色申告が取り消されることにより推計課税ができるようになりますので(法人税法131条)、法人税の推計課税が行なわれ、さらに消費税の推計課税が行なわれる、というおそれがあります。
 そしてこの場合は、上述のとおり、保存が認められない全部又は一部の仕入れについて、仕入税額控除の適用がありません。
 さらに、当初申告より税額が増えることになりますので、過少申告加算税や延滞税も別途課されます。隠ぺいや仮装があると、重加算税や刑罰の対象にもなります。

5.おわりに

 消費税は、付加価値税といわれることもありますとおり、「付加価値」に対して課される税であり、売上税ではないため、仕入れについても推計するのが妥当ではないか、という批判や、そもそも消費税は推計課税が法定されていない(所得税法や法人税法には推計課税に関する規定があります。)という批判が考えられますが、いまのところは上記のような取扱いがなされております。
 なお、税務職員が税務調査を行う権限のことを質問・検査権というのですが、これには一定の範囲があります。また、帳簿等の保存には一定のルールが定められております。詳しくは、税理士にご相談ください。

(税理士:佐藤大祐)

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