税理士が行う租税教育とは?

2015年12月6日

 名古屋税理士会では、平成15年度に租税教育を重点施策に掲げて以降、租税教室の開催回数は順調に増え平成26年度には500件に迫る開催実績を得るに至っています。

 租税教育が大きな転機を迎えるきっかけとなったのは、平成22年12月に公表された「平成23年度税制改正大綱」に納税環境整備の一環として官民協力しての租税教育の充実が盛り込まれ、日本税理士会連合会(以下 日税連)では平成23年4月21日に「租税教育基本指針」を制定しました。さらに平成23年11月16日には文部科学省、総務省及び国税庁を構成員とした「租税教育推進関係省庁等協議会」が発足し、これにより教育現場における租税教育受け入れの協力体制作りが積極的に展開されるようになりました。昨年、税理士法が改正され、租税教育が日税連及び税理士会の会則の絶対的記載事項とされたことからも税理士が行う租税教育がより社会に重要な役割を果たすことが期待されています。

 我が国の生産年齢人口約7000万人うち約5500万人が給与所得者で、大半の国民は勤務先で行われる年末調整で課税関係が終了しています。つまり、多くの国民の税金は給与天引きされており、所得税等を納付している実感がないのが事実です。このような源泉徴収制度を採用している我が国において、税金に対する国民の関心度は低く、また税金の使途に関しても全く意に介していないのが現状と言えます。選挙権の年齢を18歳に引き下げる法案が国会を通過し、平成28年に行われる参議院選挙では、18歳以上の国民に選挙権が与えられることとなりました。どれだけの多くの若者が政治に関心を持つのかは判りませんが、選挙年齢の引き下げがその効果を増大することにつながればと注目されています。

 昭和26年に主権を回復した我が国が資本主義国家の一員として、新しい憲法の下、国民一人一人の人権が尊重され、民主主義を確立してきました。しかしながら、戦後70年も経つと、その自由主義国家であるという価値が日本国民の心の中から薄れ始めているのも事実であると思われます。憲法で保障されている人権の尊重、不戦の誓い、主権在民の重要性などをあらためて再認識しなければならない時期に来ているのではないかと感じます。

 国民の政治への無関心は、将来の生活に目を背けることであり、自分の子孫に対する責務の放棄であり、権力の横暴を許してしまうことにつながります。国民が政治を知ること、政治に関心を寄せること、政治に参加することが求められています。国民が政治に対する意識を持つこと、それは日本の税制の認識そのものであります。税を知ること、税の使途を知ることは、日本という国家を知ることと同じ意味を持ちます。「税は国家なり」という言葉があり、「法律なくして課税なし」という法治国家の成立を意味し、主権在民の重要性が税には存在していると言えます。租税教育はまさしくその一端を果たすことのできる重要な位置を占め、日本国の根幹を為すものであります。

 税理士は、納税者の代理人として極めて高い公共性と独占性を付与されており、租税に関する法令を熟知し、あるべき税制について国に対し建議ができる専門的能力を有しています。つまり、税理士は、租税教育等のテーマである税とは何か、なぜ税金を納めなければならないのか、税がどのように使われているかなど、独立した公正な立場で税の役割について指導すべき適任者であります。

(税理士 大川雅彰)