信託について・・・大切な財産を家族に託してみませんか

2017年9月15日

1.はじめに

「高齢になってきたので、判断能力が欠如する前に、自分の不動産の管理、処分を子に任せたい。」

「会社の経営権を早く子に譲りたいが、多額な自社株の移動コストがかかるので、とりあえず、議決権だけ子に譲りたい。」

こんな場合には、信託を検討してみてはいかがでしょうか。

 

「信託」と聞くと、信託銀行や投資信託という資産の運用を思い浮かべる人が多いと思います。しかし、昨今、営利を目的とせず、自分の財産の管理などを親族などに任せる「信託(民事信託)」が、高齢者や障害者の財産管理や遺言に代わる財産の承継方法として注目されつつあります。

 

2.信託とは

信託とは、財産を信頼できる人(又は会社)に契約に基づいて預けて(託して)、預ける目的に従って管理してもらうことをいいます。信託は、財産を「預ける人(委託者)」と「預かる人(受託者)」と「預けられた財産から得られる利益を得る人(受益者)」の三人が当事者となります。

また、信託の特徴として、財産が信託されますと、信託期間中は受託者自らの判断でその財産の管理・処分をすることが基本ですので、財産の名義は委託者から受託者名義に変わり、民法上受託者が財産の所有者となります。このことは、「代理」や「委任」と大きく違う特徴です。さらに、信託できる財産には、現金、不動産、株式など制限がありません。

 

3.信託税制

信託では、受託者が民法上の財産の所有者となりますが、税法上は、原則、受益者が財産の所有者となり課税されることになります。

具体的に、父(委託者)の所有する賃貸不動産(信託財産)を子(受託者)に信託し、父が賃貸収入を得る(受益者)ケースを例に説明します。

(1)信託設定時

信託により父から子へ所有権が移転しますが、所得税法上は信託を目的とした形式的移転として資産の譲渡や取得に該当せず、所得税法上・相続税法上(贈与税)共に課税関係は生じません。したがって、所有権移転に伴う登録免許税や不動産取得税は非課税となります。但し、信託登記に関する登録免許税はかかります。

(2)信託期間中

所得税法上は信託財産である賃貸不動産の収入及び費用は父(受益者)に帰属するものとみなされ、その利益は父に対して課税されます。さらに、賃貸不動産を売却する場合には子が名義人として買主と売買契約を締結し代金の決済まで行いますが、その譲渡益は父に対して課税されます。

ここで注意が必要なことは、信託設定時、あるいは信託期間中に委託者と受益者が同一人でなく異なる者となったときは、父から新たな受益者に信託財産の贈与が行われたものとして、受益者に贈与税が課税されます。

なお、障害者の子の生活の保障のための特定障害者扶養信託については、一定金額まで贈与税の非課税特例があります。

次に、信託期間中に受益者である父が死亡すると、信託財産が相続財産となります。また、財産評価は、父が賃貸不動産を信託しない場合と同じになります。

(3)信託終了時

信託契約により信託期間が終了すると、子から親に信託財産の所有権の移転が行われますが、信託設定時と同様に課税関係は生じません。

 

4.おわりに

冒頭の自社株のケースは、父を委託者及び受益者(配当等を受ける財産権)とし、子を受託者(議決権)として信託契約を行います。このように、信託契約の内容は原則自由に定めることができるので、これまでの成年後見、遺言、遺産分割、事業承継等の制度では実現が困難であった問題にも、信託の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

【税理士 福本恵一】