「税制改正に関する建議」について

2012年3月22日

「社会保障と税の一体改革」に関する議論が活発に行われています。消費税の増税ばかりに注目が集まっていますが、すでに昨年来、年少扶養控除の廃止や子ども手当の減額、復興増税に伴う所得税・住民税の引き上げ等が決まっており、これに新たに消費税の増税が加われば、国民への税負担は一段と増し、個人の生活に大きな影響を及ぼすこととなります。
こういった税制改正の動きに対し、税理士としての意見や考えを問われることがよくあります。そこでここでは、税理士会が毎年行っている「税制改正に関する建議」についてご紹介したいと思います。
建議とは、一般的に役所に意見を申し立てることを意味します。税理士法第49条の11には、「税理士会は、税務行政その他租税又は税理士に関する制度について、権限のある官公署に建議し、 又はその諮問に答申することができる。」と定めらており、この規定に基づいて税理士会では、財務省、国税庁、総務省、政府税制調査会等に「税制改正の建議」を行っています。
「平成24年度・税制改正に関する建議書」では、税務に関する専門家として納税者の立場に立って、税制のあるべき姿を、次の5つの基本的視点から表明しています。
(1) 公平な税負担
公平な税負担は、税制を考える上で最も基本的な視点であり、納税者が負担能力に応じて分かち合うという意味である。また、公平には、水平的公平、垂直的公平とともに世代間の公平の問題があり、それらが相互に補完し合うバランスのとれた税制を構築していく必要がある。
(2) 理解と納得のできる税制
わが国の国税のほとんどは申告納税方式によって税が確定し、賦課課税方式による個人住民税なども所得税の確定申告を基礎としている。申告納税制度の下では、納税者自らが課税標準及び税額を計算し申告を行うので、租税制度は納税者が理解できるものであり、また、その目的や内容についても納得できるものである必要がある。
(3) 必要最小限の事務負担
租税収入に係る費用は、税務行政庁側の費用だけでなく納税者側の事務費用も併せて認識されるべきであり、過度の負担を納税者に強いることは避けなければならない。
(4) 時代に適合する税制
税制には、納税者の経済活動における選択を極力歪めないよう中立であることが求められるが、一方では財政や経済とも密接な関係を有している。経済社会の構造変化に応じて税制が適切に対応していかなければ、新たな不公平が生じるなどの弊害を招くことになる。したがって、税制を常に時代に適合するものとすべく、その見直しを継続しなければならない。
(5) 透明な税務行政
透明な税務行政は、公平な税負担の確保と申告納税制度を維持発展させるためには必要不可欠であり、納税者から更なる信頼を得るための施策を行っていく努力が求められる。
この5つの基本的視点の下、同建議書では、所得区分の見直しや、交際費課税に関する要望など30項目の税制改正建議のほか、「確定決算基準の維持」、「消費税の改正」、「国税・地方税の申告納税の一元化」の3項目に対する基本的な考え方や問題意識を表明しています。
こういった税理士会が毎年行う建議が契機となり、最近では、特殊支配同族会社の役員給与損金不算入制度の廃止(平成22年度)、同族会社の留保金課税制度の廃止(平成18年度)などが実現されています。
税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることが税理士の使命であり、税理士会の意見表明は、まさに税理士の使命に基づく税理士会の義務なのです。税理士会は納税者に一番近い税務の実務家として、今後も税制の適正化に向けて積極的に提言していきます。

(税理士:加賀元浩)